大いなる復活 宝塚記念戦記<2012・オルフェーヴル>
2012年春の2走だけ、我を通した名馬。
前走で勝っていた馬が6頭いて、うち半数はGⅠを好時計勝ち若しくは、圧勝をしていた。
春の天皇賞組を中心に、前走GⅠを使って臨んだ馬も6頭いて、4頭が3着以内。
残る2頭のうち、安田記念8着のスマイルジャックは、距離実績のなさも影響してか、単勝159倍のブービー人気であった。
前走4着以下から巻き返して勝利した馬は、最近ではマヤノトップガンだけ。そういえば、有馬記念を勝って、阪神大賞典で惜敗して、春の天皇賞はよもやの大敗を喫し…、いや、それでも5着だったじゃないか。
トップガンが1番人気になったのは、GⅠ級がダンスパートナーしかいなかったから。はあ…。
データが指し示す、切りのサイン。3倍台の1番人気にみる複雑なファン心理。
そのトップガンを競り落としたナリタブライアンの栄光と挫折そのものを辿っているとすれば、ライスシャワーみたいなことも考えられなくはない。
シンボリルドルフ・ディープインパクトといった、日本競馬の金字塔を打ち立てたレジェンドたちと共通する血が何を暗示しているのか。
サイレンススズカと同じ毛色でも、ドラマチックさや儚ささえも似てしまえば、期間限定最強馬の複製に過ぎない。
しかし、全てが違うからこそ…。
内から走る気を漲らせ4角を回りきった時、8分仕上げのこの馬は紛れもなく、
「三冠馬・オルフェーヴル」
だった。
ここまで54回宝塚記念は行われてきたが、その中で最も非常識な競馬である。
オルフェーヴルは立ち直り、ここから引退レースまで、結局連を外すことはなかった。