血視点⑥ アジアエクスプレス
中山だけとはいえ、芝で立て続けに結果を残したことで、少なくもその万能性に疑う余地のないことを証明した2歳王者。
どうみてもまだ成長途上で、かつその進化の可能性を体型の変化によって示したことで、早熟を疑う声も封じ込んだ。
父のヘニーヒューズは、アメリカのスプリントGⅠを2勝しているが、肝心のBCでは力及ばず2戦2敗。
どちらかというと早熟。血統の印象通りの馬だった。
ダート向きに思われるのは、アメリカ血統が凝縮されているせいもあるのだろうが、タフなダート戦を特別選り好みするわけでもない。代表馬へニーハウンドなどその好例。
父はストームキャットの孫。
母はフォルティノ-カロの系統と日本向きの軽快なスピードを持ち味にするラジャババの孫という組み合わせで、こちらは芝向きの可能性を秘める。母の父ランニングスタッグは芝のGⅡ馬だった。
どれも強烈なインパクトはなく、大種牡馬からは多少距離のある血統構成。
父と母で血統構成がまるで違うように見えるが、血統表の右端の目を向けると、ノーザンダンサー・プリンスジョン・レイズアネイティヴ・ボールドルーラーなどが共通の祖先に名を連ねる。
芝をこなしていることより、この配合からチャンピオン級の馬が誕生したことの方が不思議。
内在する各大種牡馬が、その底力を少しずつ持ちより、絶妙なバランスで万能性を引き出したのだろう。
競走能力というのは、父の名前だけでは測りきれないものだ。
芝が向いているとは思わないが、世代屈指の才能で先入観を既に破壊した。
疑い続けるより、どんな可能性を秘めているのかを考えた方がよっぽど楽しい。