宝塚記念 総評
パドックで一番いい具合に映ったのが、Vマイル連覇を決めたヴィルシーナ。乗り替わりであろうとなんだろうと、調子のいい馬が前に行けば、それなりの競馬を作ってくれる。
カレンミロティックから特別好気配は感じ取れなかったが、今にして思えば、彼にとって苦手な単騎先頭の競馬にならないのなら、ここはスロー見え見えなのだから、チャンスがあるに決まっている。
穴馬だからこそ、こんな些細なことでも着順に影響が出るということだ。
そう考えると、全投票の約99%が希望票のゴールドシップが、それに応える気になったかどうかは不明も、順当に結果を残したことは必然であったのだろう。
何もしないことも、勝利への一番の近道。東の鬼才が、ありのままのゴールドシップを引き出した。神業とも称されるその手腕が、日本競馬界に与える有益な影響をこれからも大いに示してもらいたい。
この馬らしい勝ち方を見出した結果、勝利の女神がほほ笑んだ。
それが偶然でも奇跡でも、また実らぬ結末であっても、本質に迫ったことの意味が台無しになることはない。
一方、ウインバリアシオンは本当に辛い。
前走に伏線あり。目一杯勝負を賭けて、寸前の連続鞍上スイッチで勝ち運も逃した。
ただし、結果はいつもと同じ。キズナの後ろからもし仕掛けたとして、ではそれを交わし、ホッコーブレーヴ以上の脚を使えたかどうかとなると…。
早仕掛けをすれば、結果は目に見えていたわけで、それ以上を求めるのは酷だった。
名馬の陰に隠れて露見してこなかった、勝ちパターンの作り方の難しさが、ゴールドシップの勝ったレースで顕在化するとは、あまりにも皮肉である。