不可侵領域
今年ここまでの中央重賞は、9割方サンデーサイレンスの孫が制していて、前期のGⅠレース全てをその孫の世代の馬がジャックした。
ダート路線を見ても、交流GⅠのかしわ記念もフェブラリーSを勝ったコパノリッキーが制し、スピード戦でダートチャンピオンロード向きの馬では、なかなか歯が立たないことが、改めて露見したのであった。
しかし、それ以外のGⅠでは、ホッコータルマエ、ワンダーアキュート、カゼノコと、言うなれば「アウトサンデー」血統が、人気のインサンデー馬をねじ伏せ、存在感を示した。
そして、今年中央重賞を制した唯一の外国産馬であるベストウォーリアが、今年のダート主要競走を制したサンデーの孫を相手に、人気面でも実力の部分においても圧倒するような競馬で、自身にとっても待望の古馬重賞初制覇を果たした。
結論としては、時計が出やすい馬場でも芝のキレ味勝負のような上がり33秒台の脚を要する展開とはならないから、五分に戦えるということだろう。逆に言うと、芝を走れる能力を秘めている馬であれば、素軽さを武器とするインサンデー馬をアウトサンデー馬が負かすことは、そう難しいことでもないのである。
中でも、カゼノコという才能は魅力的だ。
父母とも、450kg前後の小柄な体を駆使して活躍した馬だったが、その仔もまた同じような体で末脚を武器に、中央馬並みの血統を持つ地方の雄をゴール寸前で捉え、三冠阻止。
サンデーの血の入ったこういうダート馬は少ない。おまけに、その末脚に屈したのはサンデーの孫。
血統の優劣を直接反映した競馬ではないが、このスポーツの奥深さが凝縮された一戦だった。