クイーンS -回顧-
松田大作の逃げも田辺裕信の読みも決して間違った判断ではなかった。
しかし主役となったのは、いい馬に乗った時は最近きっちり結果を残している騎手たち。彼らが上位争いをすることで、至極納得のいく力勝負となった。
結果、本来は決まらない差し追い込み脚質の人気馬が勝ち切りそうなところ、セオリー通りに封じ込める普通の結果がレース史に刻まれた。勝負運は流れによるところが大きい。
池添、福永の頭の中にあるものを想像するに、それは全く違う視点で同じレースのことを思っているのだろう。
年も近い戦友が、もしも快挙を成し遂げたならば…。
1000M通過は57.8秒。1:45.7の勝ち時計とともにレースレコードでコースレコード。
1800重賞で戦う術を十分学習した上で、半姉レディアルバローザより更に小回り適性を上乗せされたディープ産駒は、上手に立ち回ってきたことが勝因にはなったものの、それが上手にはできない2、3着との適性の差と、しかしながら、前述のペースを考えた場合、5歳牝馬が充実期に入ったと考えるのが筋だろう。
昨年のこのレースで、中団から伸びあぐねた頃とは馬がガラッとよくなって、力勝負に向く姉のいいところが今のキャトルフィーユにも見受けられる。距離が伸びていいとは思えないが、まだまだ活躍できる馬だ。
ハーツクライのそれも元々はお手馬だったオツウの作ったペースで、自分の馬の良さをフルに発揮した福永騎手の冷静な騎乗もよかった。でも、今の自分は、無理やりではなく自分に向きそうな流れになることを望んで、しかしそうはならなかった松田騎手のあの乗り方を、どこかで密かに狙っている自分というものを作り上げてほしい。
ただ乗るだけでは勝てない凱旋門賞に、勝負しにいく姿勢で臨むというのが大切。
大一番の前に一瞬でも、親父の狂気的で天才的な発想が脳裏に浮かんでくるような過ごし方をしてほしい。
少しくらいヤバくてもいい。
さて、池添騎手に合っていそうなスマートレイアーや、これからのために何かを仕込んでおきたかった三浦騎手駆るアロマティコなのだが、やっぱり勝ち癖をつけないとダメなところで負けてしまう切なさが、言葉選びはよくないが騎手とそっくりだった。
お互い、馬体を離して勝つイメージがあるから、やっぱり札幌1800はタイトすぎるのだろうが、結果は他のコースでも同じだろうし…。