天皇賞(春) -予想-
好メンバーが顔を揃えるも、オルフェーヴルに子ども扱いされた有力馬2頭が、直前での鞍上正式決定の運びとあって、オルフェの因縁は未だ…。また新たなドラマが生まれる予感もする。
ずっと懐疑的だったから、今更人気の追い込み勢を本命視するのも何だし、でもその他の先行タイプも…。
一昨年のビートブラックの快走によって、穴党の中にある「ボーダーライン」が、大分不可能な方向へシフトしたのをいいことに、昨年はそれをまねて大失敗したが、その時の本命馬が豪華絢爛の前哨戦で2着だったから、一年早かったとまたしても地団太を踏む結果になって、ちょっと不満が募っている。
悔しいから今年も馬券的妙味を追求してみると、京都巧者がやはり優位に立てるのではと、そこから穴馬探しを始めてみた。
メンバー中最多勝は、よりによって大外を引いてしまったデスペラードの6勝。芝に限定すると3勝。ここにはキズナとオーシャンブルーという買い目に入れたい馬が加わり、2勝した馬となるとまた4頭いて…。
そこで、近2走2400M以上の重賞で掲示板に載っている京都芝2勝以上の馬と括ってみると、
アドマイヤフライト
キズナ
サトノノブレス
ラストインパクト
の4頭になった。
今年は3000M重賞の好走馬も多いから、敢えて未知の魅力に期待して距離未経験馬を調べると、列挙順上から2頭までに絞り込めた。
昨春は不完全燃焼の感もあった2頭。
弥生賞5着で、目標をダービーにのみ絞った英断は勝利に繋がったキズナだが、皐月賞に出られていたならもしかすると…。
ダービーを勝って、凱旋門賞にも挑戦してという流れに言いがかりをつけても仕方ない。
そうなると、冬になってようやく本格化の気配を見せ始めたアドマイヤフライトに気持ちが流れてしまう。
前走は、特殊なコースで一番早く仕掛けていって止まってしまった度外視できる内容。
ムラな面は否定できないが、その前までは2200M以上の競馬をフレッシュな状態で使われていれば、連を外したことはない。
もともと順調に使えなかった馬で、昨春は休み明けから3連勝で日経賞に挑んで負けてから、降級後もパッとせず、また休んで仕切り直して、今に至る。
高速決着への不安は、血統、戦績の両面から推察されるが、ビートブラックと比べ、2400Mの持ち時計では0.1劣るだけ。
最近のトレンドは、いかにも中距離重賞で見劣りする馬がよく単穴を出す。
更に、近10年で500kg超えの馬が3頭勝っているのも心強い。
追い込み馬よりは…、の論法。
キズナのレースぶりから、叩き合って勝つイメージはない。距離不安がなくとも、父のように捲れば流石に止まるだろうし、馬場への意識がユタカマジックを引き出すかもしれないが。
体調面に不安は残るが、対抗はフェノーメノ。他の候補に見劣らぬ底力を秘め、連覇の可能性も十分ある。
フローラS 予想
この世代の牝馬の中核を形成しているのは、阪神ジュベナイルフィリーズ(JF)上位組だ。
その阪神JF組でこのレースを制した例をひとまず調べてみたのだが、阪神3歳牝馬Sと改称後、出走条件が絞られて24年も経ったというのに、まだスティンガーしか勝っていないのだ。もちろん、前身の4歳牝馬特別時代の話。
時代は流れて、今阪神競馬場の様相は大きく変容し、新コースのマイル戦からは歴史的名牝が湯水の如く、毎年のように出現している状況。そこから中一週でここに挑み、また3週間後のオークスに出て結果を出せるほど、日本の競馬は落ちぶれていない。
ちなみにだが、スティンガーの前でこれに該当すると思われるのは、桜花賞を制した後に叩き台としてここに挑んできたメジロラモーヌ。その頃2歳の牝馬が暮れに目指したのは、中山マイルで行われていたテレ東賞3歳牝馬S。当然、ラモーヌはそのレースも勝っている。
回りくどいついでに、穴党はその辺りから今回2頭いるJF組を切る捨てる要素を探していけばいいという事だが、逆に言えば、それに逆らうという意思表示でもある。
母が勝ち切れなかった舞台で、娘がたった一度しかない名誉挽回の機会を得た。
タイムウィルテルがシンコールビーにハナ差屈したのは、今から11年前の春。奇しくも、前述のメジロラモーヌ以来17年ぶりの三冠牝馬が誕生した年だ。
翌年ダービーで2着激走するハーツクライが父という、クラシックの落し物拾いを宿命づけられこの世に生を受けたのがこのマジックタイム。
彼女は期待に違わず、両親が得意とした左回りで結果を残して、除外されることなくJFへと参戦。
だが、恐ろしいまでに猛々しく、あまりに逞しいライバル相手に掲示板にはわずかに届かず。
そこで3着だったフォーエバーモアに、クイーンCでも先着を許し…。
父がダービーでカメハメハに粉砕されて不遇の時代に突入したように、母もこのレースで曰くを残した。
母の父ブライアンズタイムの傑作たる三冠馬を天皇賞で破ったのは、紛れもないシンコールビーの父サクラローレルである。
名馬の血が、因縁深く絡み合うのがクラシック路線。
結論としては、実績からここでは格上だろうという評価。
父とは因縁のあるディープインパクト産駒で、期待の一頭に数えられるイサベルを挙げようと思ったのだが、血の軌跡を辿っているうちに、つい浮気をしてしまった。一発はある。
前走阪神組は、人気あるなしに関わらず押さえは必要。距離延長は微妙かもしれないが、ブランネージュはさすがに切れない。対抗ニシノアカツキと同格評価で、フラワーC組の決め手には疑問もあり、広い馬場の好走歴を重視する。
皐月賞 ―展望―
日本は未だ2400至上主義。凱旋門賞への畏敬の念には、異様さすら感じる。
クラシック競走は距離に対する耐性に加え、基本距離における底力の有無を明確化させて繁殖馬選定の基準にしようとする理念を具現化した形。
だが、今年はともかく、高速馬場でスピード型の馬が覇を競う近年の傾向から、距離そのものの持つハードルの高さは均衡し、三冠競走で最も短い距離の勝ち馬がNo.1という流れが定着しつつある。
ヴィクトワールピサやゴールドシップ、メイショウサムソンがそう。
牝馬の場合、二、三冠馬がどんどん登場するような時代になったから、桜花賞は可憐なイメージ以上に絶対不可欠な要素となり、格は年々上がっている。
そんな重要な一戦に、今年捉えどころのないメンバーが揃った。
3戦続けて快時計で駆けた馬。中山で一発を目論む才能もちらほら。
変則開催にもめげず結果を出し続けた馬や、京都でしか走ったことのない無敗馬らも参戦。
ただ2月時点で、2歳王者の動向を除けば、あとはトゥザワールドがトライアルでどうなるかだけが気になるのみで、ここの勝ち馬はもう眼前にいるという見立てがあったのも確か。
評価微妙だった暮れの2大ステージの勝ち馬も、それぞれ最重要トライアルで2着だったから、ひとまず方向性は定まっていった。あとは、どの馬の可能性を信じるか。
可能性という観点では、距離未経験の馬にも寛容なのが皐月賞。
イスラボニータ、ロサギガンティア、アジアエクスプレス。
いずれも美浦所属の重賞馬。本質を除けば適応範囲内の競馬だ。
もっと言えば、近10年でロゴタイプなど4頭の2000未経験馬が制していることを重視すると、この3頭は有力候補と見ることさえできる。
今週も蛯名騎手を追いかける。
イスラボニータ唯一の敗戦をどう評価するかは、案外難しい。
牡馬としては切ない結果だし、一方で速い上がりの競馬ばかりで着差が小さい割に連勝が続いているから、特殊で強烈な末脚に屈した時以外は、むしろ勝負強さを見せたとも言える。
血統の印象に見合ったここまでの戦績からは、まだ底力を出し切っていないとも推測できるし、勿論傾向のはっきり出ている父のジレンマが優勝を阻む最大の障壁となることを支持する根拠にもなる。
コーナーさえきっちり回ってくれば、自ずと結果を残せそうな雰囲気は、他馬の本番までの過程を見る限り、上位評価されて当然。
妙に内の枠を引いて万一の雨は怖い要素にもなりうるが、先行力は大きな武器。
今年の牡馬路線は、こういう出し入れが主体の競馬となるだろう。全ての長所を今回は支持する。
対抗はトーセンスターダム。あのズブさは次戦の展望に繋げる最高の武器となると考え、軸馬として推奨する。
桜花賞
枠は大外。暮れは真ん中の10番枠で、前走のチューリップ賞では3枠3番の内枠。戦績にムラが出ているわけではないハープスターにとって、むしろ偶数枠は有利なほど。
JF組が主力であると同時に、そこに出ていたメンバーが、今回実に8頭も参戦してくる。
桜花賞の登録頭数そのものが少なめだったからあまり参考にはならないだろうが、レーヴデトワール以外の7頭は抽選もなくオートマチックに出走へと漕ぎつけた。
今回も逃げることが予想される二ホンピロアンバーを除けば、みなJFの前の時点で本賞金が500万勝ちの馬より上回っていたくらいだから、モズハツコイはレッドリヴェールとともに直行で花舞台へ駒を進めることとなった。
再戦ムードという優位性に加え、今年裏路線組としていつも侮れないフラワーC出走馬の参戦はなし。
期待されるパフォーマンス以前に、今の彼女なら戦わずしても…、の世間評が大勢を占めるのは当然なのである。
よほどのことがない限りは。
そこで考えたのが、真逆の脚質で勝負できるタイプのチャンスの芽。
ディープもブエナも、いつも以上に策を凝らした自分より前にいた馬を捉えきれず敗れたことは記憶に新しい。
歴史はいつの時代も、先手必勝を粗探しのヒントとして提示してくれている。
本命党以外でも頭にあまり悩まないような競馬で、上位人気馬を逆転候補に挙げるのはあまりセンスが良くないのだろうが、クイーンCで終始掛かりっぱなしだったフォーエバーモアの秘める底力は、絶対候補への反逆を企むには十分すぎる程のように思えてならない。
競馬界では、好位抜け出しをした者を最も巧いレース運びをしたと称賛するのだが、それがハープスターのような破壊者によって木っ端微塵にされてきたのも事実。
ディープがまさにその代表格。
がしかし、能力差がそこまでないと仮定するならばどうだろうか。
俄然、前に行く方が有利になるもの。
ウオッカとスカーレットがそうだった。
ネオユニヴァースの産駒で速い上がりを使える馬はいても、前に行くなり速い時計への対応を求められると脆い馬が多い。
でも、フォーエバーモアは前にも行けるし、差してもそれなりの脚を使える。
JFの大接戦3着で時計面の不安を払拭し、ネオの牝馬は走らないこれまでの傾向を覆してみせた。
マイル近辺に合う高速馬場向きのアウトサイダー色が強い血統構成。また、歳の離れた伯母の孫からはあのジャスタウェイが誕生しているというバックボーン。今ワンダフルな仕事をするには打ってつけのシチュエーションであろう。
マイルなら勝てる。
本命馬が走って初めて成立する理屈。対抗は言わずもがな。