新馬回顧 7
7/19 土曜
本州は雨。全て稍重。
中京
芝1200
たまに出るホワイトマズル牝馬のスプリンターであろうタガノヴェルリーは、ジェニュインの一族。パートン騎手がこういう馬に乗ると、絶対に前に行くこともメモしておきたい。
ダ1400
豪快に大外一気を決めたグラブザフラッグはタピット産駒の米国産馬。ほとんどテスタマッタだ。血統はこちらの方が垢抜けている。その他人気勢は、晩成型もいたか。
福島
芝1800
勝ったミュゼエイリアンは、外枠を活かて自分のリズムで走り、最後突き抜けた。スクリーンヒーローの男馬。人気のココロノアイが、スタート直後に両脇から締められ終始窮屈な競馬を強いられたのとは、あまりに対照的。両者とも重賞級に育つだろう。
芝1200
ゴール前、雨馬場と減量の利を活かして伸びてきたナリノネーヴェは、プリンセルメモリーにそっくりのスウェプトOV産駒。急坂への対応力次第で路線が決まる。
7/20 日曜
牝馬が上位を独占した中京芝1400Mは、良馬場で行われた。レディルージュの下・ルアンジュが勝ったのはいいが、父の中に入ったリボーのせいか、ヘイローの3×3のせいかはわからないが、とにかく口向きが悪く、全く真面目に走っていなかった。
福島は残念ながら稍重のまま。バクシンオー×Sゴールドのイメージ通りの競馬で、コウソクコーナーが人気に応えて快勝。前後半のレースラップは35.2秒ずつ。これなら函館王者と同等評価もできる。
函館は1800戦で締め。人気のスワーヴジョージが、四位騎手のイメージ通りのゴール前抜け出しで力のあるところを示した。ハービンジャー産駒。世代の基準になれる好素材とみた。
函館記念 -回顧-
いつもとの違いの一つが、内を狙った馬がことごとく詰まってしまっていたこと。
前日の2歳Sもそうだったが、今年函館で行われた重賞競走は、ことごとく好位抜け出し組が不発。このレースでも、勝浦、岩田といったそっちの方から抜け出す競馬をどらかというと好むタイプの騎手が、今回もイメージ通り乗って、結局直線で同じスペースを狙うしかなくなって、外差しを許す結果に。
ハンデ重賞のような、些細なことで着順が変わるレースでこういう流れが続くというのは、勝負師にはとても辛い。こういうのは流れとしか言いようがない。
もう一つが、1番人気の馬に向く競馬になったのに、結果みんな惨敗していること。
函館SSも2歳Sもその類の決着で、妙に人気を集めたグランデッツァの場合は、怪しさはあったと言えども、少しきつめの流れを好位からドンドン前に攻めていく競馬をするのにぴったりの展開だったのに、斤量なのかどうか敗因は定かではないが、直線は失速。
前々走の反動もあったのだろうが、勝ち馬ほどは函館適性がイマイチの可能性もある。何せ、北海道は約3年ぶりの参戦なのだから、データも何もないのだ。バウンスシャッセも同じような理由だろう。
ハンデ重賞らしい結末だ。
そして、ラブイズブーシェは素晴らしかった。
有馬記念で体得した武豊直伝の追い込み脚を披露する舞台がどこかで必ずあるのだろうと手ぐすね引いて待っていたファンには、実にたまらない展開となった。
4角で後ろにいたのは、2着のダークシャドウ。
斤量差2kgの影響は、加速の必要な小回り前崩れの捲り合いでは決定的な差を生んだ。
有馬記念と同じように、この函館記念も特殊なレースとして認識されている。展開一つ、馬場状態も時計面に影響する共通項には、不思議なシンパシーも感じる。
このコースのレコードホルダーであるサッカーボーイも、有馬記念で好走している。
昨夏函館で2連勝しているが、ラブイズブーシェというのは函館、札幌の未勝利戦を勝てなかった馬。
明けの中京で未勝利馬ながら500万特別を制してから始まったサクセスストーリーは、努力と経験の古馬戦線における、ごくごく基本的なスキルアップの積み重ねがあってのもの。
強運がどうのこうのとは一線を画した、実力馬による初重賞制覇だ。競馬というのは、本当に不思議な縁で結ばれているのものである。
春風で涼む
GⅠで1番人気を裏切る馬が現れると、案外皆が傷つくものである。
今春も例年並み程度にその裏切りが起こってしまった。悲しくもあり、勝負の厳しさが如実に表れるのも、1番人気の馬が負けると分かった瞬間を目撃した時だ。それを思い出せば、意外と体の火照りも治まってくる。
計11回行われたGⅠレースでは、7度1番人気が敗退。
ベルシャザール
ストレイトガール
トゥザワールド
キズナ
スマートレイアー
ハープスター
イスラボニータ
うち4着以下に敗れたのが、ディープ×ユタカという唯一無二の絆を受け継いだ良血2頭であった。
前走の阪神で豪快に立ち回って人気に応えたキズナとスマートレイアーが、上がりの速い京都や東京で差し損ね。
前者は初距離に加え、レース中だったかはともかく、激闘の末に脚を傷める結果に。後者は東京での高速の上がりを評価されていたが、新潟と中京では不発だった。
夢見る投票者の思いとは裏腹に、過剰に人気を集めたがため、強固な絆は破綻した。勝ち馬とはわずかな差も、近年の春のタイトル争いで、特に波乱含みの競馬が多かった2レースでのこと。これも必然だったか。
安田記念の翌週から、2週続けて断然人気馬が吹っ飛んだのも記憶に新しい。
マジェスティハーツの場合、前々週のハーツクライ×ノリによるダービー戴冠というビッグシーンが大きく影響した。今週もノッていけ。ただ、4週続けてとはいかないのも乙なところ。おまけにディープの仔に敗れるとは、神様も悪戯好きだ。
その翌週に断然人気に推された2頭の不利と自滅に見たものは、夏の風に呑まれた姿。
6月の雨は、ローカルモード突入のサインでもある。
新馬回顧 6
土曜日は短距離戦が4つ組まれ、福島で2鞍行われた。
大接戦のゴールとなったダート1150M戦は、最後の最後に内の2頭を競り落としたブラックレッグの勝利。大昔の二冠牝馬ミスオンワードを出した一族。タイキシャトル産駒だが、単調なタイプではないだろう。
芝1200のニシノラッシュの勝ち方は、実にセンスのいい内容。マイルくらいまではこなせそうで、バクシンオーの底力を感じさせる。
中京1400も函館1200も混戦模様だったが、勝ち馬は強かった。
中京で人気に応えたのは、チチカステナンゴ産駒のブリクスト。ただ、フジキセキが肌の母母父ジェイドロバリーで重厚なタイプではない。春の東京のマイルGⅠでも来たくらいだから、この馬も少し追いかけて、データ収集といきたい。
北は、テンも終いも一番の時計でアクティブミノルが好時計で圧勝。スタチューオブリバティの代表産駒になれる逸材か。差しタイプに育つだろう。
日曜日は、直前に雨が降ったりと不気味な気配がそのまま結果に直結。東西とも波乱の決着となった。
人気馬総崩れの中京1600は、勝ったコスモピーコックの力強さが目立ったレース。重厚なヨーロッパ配合が、想像より重たくなった稍重馬場にフィットしたか。牝馬ながら、中距離以上の牡馬混合戦で穴狙いをしたい。よりタフな競馬が合うはずだ。
荒れ放題の福島1800戦も人気薄の逃げ切り。馬場悪化こそなかったが、中京同様行った者勝ちの競馬に持ち込んでゴッドバローズが快勝した。ステイゴールドとディープの人気馬のワンツー。ともに420kg台の小柄な馬だが、多分に成長力を秘めており、大化けもある。
七夕賞 -回顧-
台風の影響が皆無だったにも関わらず、レース当日に雨が降る。3日前の予報では猛暑日になるとも言われていたのに、単なる高速馬場ではなく、ある程度のタフさやそれでも時計が速くなる馬場状態だったから、またある程度いい位置につける能力が問われた。
福島の競馬がよく荒れるのは、最も気候が不安定な時期に、オフシーズンに突入して早々に難解なコースで、また各馬の調子が掴みきれない時、今回のようなハンデ戦が数多く行われるからだ。
午前中から荒れ放題で、単勝50倍なんて普通の馬券だよと福島のコアなファンに言われてしまいそうな不穏な空気が流れる中、実力馬の中でも不確定要素しか持たないメイショウナルトが、田辺騎手という恋人を背にして、己の意のままに逃走し、ツインターボとは違う力勝負での実力勝ちで、重ハンデ馬の追撃を封じた。
愛の力は、本当に偉大である。元々の主戦が幸騎手で、その後武豊というベストパートナーの候補を紹介されるも、最後にはよくわからない言われ、心の通じ合う関係までは発展せず。
日本には女性騎手で、本当の腕利きというのは地方にしかいないから、そういうことを汲み取ってくれる騎手が少ないので、走ったり走らなかったりを繰り返しているのだろう。夏馬というくらいで、古馬重賞を快勝することは滅多にないもの。
牝馬とは縁のある騎手にこの馬を任せてきた武田調教師の采配は、イケメン・田辺に一任という形で、復活の一歩を楽勝で飾る結果となった。
狙いは単純だったのだろう。
「あと一つ、何か気に入る理由がないと走らない」
去勢はきっかけの一つにすぎず。メイショウナルトの迷走は今後ともファンの頭を悩ませることになるだろうが、筆者は何かを見出せた気がする。
きっと、夏は得意だけど、暑すぎるとダメ。小倉記念も雨が降っていた。そして、彼というか彼女というか不思議な性質を持ったこの馬は、また違うきっかけを求め続けるのだろうと思う。
ニューダイナスティは、昨年この時期の中京でメイショウナルトを負かしていた馬。マイネルラクリマは、手応えの割に伸びてくる馬だから、ほとんど昨年の小倉記念で3着だった時と似たような展開。
その他はもう、全く勝ち馬に歯が立たない位置だったから、これは仕方ない。
ハンデ戦というのは、大抵勝ち馬のレースになってしまうものだ。