新馬回顧 5
開催替わり。馬場悪化の回避は何より。
土曜
中京芝1400の新馬は、5番人気のドルメロが粘り腰を見せ、先行押し切り勝ち。エンパイアメーカーの仔で稍重と、2、3着の人気馬が早熟型ではないのも味方したか。
高速馬場の福島では、0:57.7で人気のハタノガイストが楽勝した。テイエムイナズマの半弟。課題は成長力。408kgでは辛い。
函館は、芝の1200でダイワメジャー産駒のグランドポピー、ダ1000はサウスヴィクラスの仔・ヤジロベエバランスがそれぞれ快勝。2頭とも牝馬。
芝で勝ったグランドポピーは、渋い馬場に向く血統。外からよく伸びたが、急坂コースの方がいいか。
日曜
全て芝。90年代に活躍した名牝を母方に持つ馬が揃った中京1600は良馬場。
母ファイトガリバーのディープ産駒ペガサスボスが、一番人気に応えてデビュー勝ち。1分40秒の時計とコースの特殊性もあり、評価保留で。高速馬場は苦手とみる。
1400の牝馬戦は、上が活躍しているハーツクライ産駒コートシャルマンの快勝。相手は楽でも、この流れに逆らうこともない。
福島も2鞍。
1800戦はフォワードカフェの楽勝。チームマンハッタンの再結成。SS系×母ノーザンダンサーの同系配合というトレンドがニックスであるという認識を共有できた時、父の無念を晴らす機会を得る。
1200はクラウンノキミが、バク×ボストンらしい爽快な逃げ切り勝ち。気になる1頭だ。
函館1800は、勝ったサウスキャロライナと2番人気馬の一騎打ちという様相も、後者が人馬とも若さを見せ、4角逸走。サウスは良血のステイ牝馬。Rリヴェールの後を追いかけたい。
CBC賞 -回顧-
牝馬の季節になったということだろう。
重めのハンデの馬も来ているし、先行、差し双方の馬が最後は厳しい叩き合いを演じていたが、リニューアルした中京戦のイメージに反し、過剰人気にならなかった5歳牝馬同士の争いとなった。
トーホウアマポーラの存在に気付かなかったわけではないが、前走の阪神牝馬Sで2番人気ながら、スマートレイアー等4歳の勢いのある馬に派手なパフォーマンスを見せつけられて、10着という何ともほろ苦い初重賞であったから、人気を集める要素などなかった。結果的に、本質的な能力比較にはならなかったオッズ面の有利さが、気楽な競馬に繋がったのだろう。
関西の準オープンを勝ち上がってきた馬は、昇級後もしばらくは軽視禁物。ましてや、牝馬のことはお任せという新婚さんへとスイッチした一戦。
いかにもユーイチズレース。これが夏競馬攻略のポイント。
「何か変化が起きると、スイッチの入る馬が活躍する季節」
3歳の時は使えなかったが、2歳デビュー時、また昨年の夏も小倉で結果を出していたわけだから、この時期に使えたことも間違いなくいい影響を与えたはずだ。
そして、フジキセキの牝馬でダメ押し。
さて、エピセアロームは斤量の差もあったと推測される。
そんなに得意だとは思えない時計を少し要する競馬に対応できたのは、これまでの経験以上に、この春あまり無理して使わず、ピークを夏に持っていこうという狙いがピタリとはまった形。
これには両陣営とも、鼻高々である。
ベルカントは力を示した内容。5着というのは、良くも悪くもない。2つの初経験の影響もあったし、きっと、もう単騎逃げは通用しないのではないだろうか。
馬の気持ちを大切にしながら、無理強いはしないように願いたい。
それをきっちり踏まえて使っていけば、今後乗り替わりがあっても、今まで学んだことをきっちり体現できる馬になる。
騎手時代に重賞勝利の経験のある調教師が、決まって名手に託すものというのは、自分になり代わり、スムーズに立ち回れるように自分らしい形を作ってほしいというリクエストだ。
古馬GⅠ総括
帝王賞までのダート路線の主役は、コパノリッキー・ホッコータルマエ・ワンダーアキュートの3頭だった。
川崎記念を順当に勝ったタルマエにとって、フェブラリーSでの最大の誤算は、リッキーのポテンシャルが想像以上であったこと。勝てるはずの競馬を落としたことで、ドバイ遠征も士気は上がらず。
代わって台頭したそのリッキーも、返す刀で何故か2番人気に落ち着いたかしわ記念を楽勝するものの、そのせいで断然人気に推された帝王賞では、そのかしわ記念で断然人気だったアキュートに一矢報われてしまい、また路線は混沌としてきた。
キャリアがあまりに違うから、この結果も当然だったか。しかし、この3者は実にあっぱれである。
短距離戦線のキーワードは、特殊な馬場への対応力。
雨に苦しんだ高松宮記念の期待馬・ストレイトガールは、Vマイルでも3着。一方で、馬場を味方につけたコパノリチャードとヴィルシーナは、その勝利の前後で結果を残し、存在感を示した。文句なしのGⅠ馬だ。
苦しみの中に新たな可能性を示したジャスタウェイにとって、あの泥田のような極悪馬場は、アンジュエーションを克服するための試金石だったように思う。
タイキシャトルもそうだった。志は高くいきたい。
ステイゴールドと5歳馬。GⅠ連覇や連勝を可能とする一番の理由は、成長力とクラシックの反動の克服。違う5歳馬で各々大勝負を挑むも…。
世界最高水準のチャンピオン競走だが、あのダービーとオークスの経験者で、かつその次戦で結果を残した者が、今最大級の賛辞を受けている。
ちょうど10年前のクラシック組と似たような傾向だ。まだまだ先はある。
宝塚記念 総評
パドックで一番いい具合に映ったのが、Vマイル連覇を決めたヴィルシーナ。乗り替わりであろうとなんだろうと、調子のいい馬が前に行けば、それなりの競馬を作ってくれる。
カレンミロティックから特別好気配は感じ取れなかったが、今にして思えば、彼にとって苦手な単騎先頭の競馬にならないのなら、ここはスロー見え見えなのだから、チャンスがあるに決まっている。
穴馬だからこそ、こんな些細なことでも着順に影響が出るということだ。
そう考えると、全投票の約99%が希望票のゴールドシップが、それに応える気になったかどうかは不明も、順当に結果を残したことは必然であったのだろう。
何もしないことも、勝利への一番の近道。東の鬼才が、ありのままのゴールドシップを引き出した。神業とも称されるその手腕が、日本競馬界に与える有益な影響をこれからも大いに示してもらいたい。
この馬らしい勝ち方を見出した結果、勝利の女神がほほ笑んだ。
それが偶然でも奇跡でも、また実らぬ結末であっても、本質に迫ったことの意味が台無しになることはない。
一方、ウインバリアシオンは本当に辛い。
前走に伏線あり。目一杯勝負を賭けて、寸前の連続鞍上スイッチで勝ち運も逃した。
ただし、結果はいつもと同じ。キズナの後ろからもし仕掛けたとして、ではそれを交わし、ホッコーブレーヴ以上の脚を使えたかどうかとなると…。
早仕掛けをすれば、結果は目に見えていたわけで、それ以上を求めるのは酷だった。
名馬の陰に隠れて露見してこなかった、勝ちパターンの作り方の難しさが、ゴールドシップの勝ったレースで顕在化するとは、あまりにも皮肉である。
新馬回顧 4
土曜
雨の降り方も影響した。
快晴の函館では、人気のアンブリカルが逃げ切り快勝。今週も現れた2歳S候補だが、まだ危なっかしさもありそうで、早熟にはみえない。
幾らか渋った馬場の阪神1200は、混戦ムードそのままに意外な大勝馬が出現。マツリダゴッホ産駒のクールホタルビは、小柄な牝馬であるからこその素軽さを見せ、先行策が合いそうな配合の印象通りだ。揉まれるとよくないはず。
直前の雨で、道悪の巧拙が問われた稍重の東京マイルは、ネオ×ブラックエンブレムというクラシック配合のブライトエンブレムが直線いっぱいを使って伸び、豪快に差し切った。血統イメージ通りというのは阪神の勝ち馬と同じ。弟の方が守備範囲が狭い分、わかりやすいタイプに育ちそう。
日曜
東西で前日よりワンランク馬場は悪化した。
そして、双方で1番人気が順当に勝ち上がった。
西はティルナノーグが勝ったが、意外だった。
ダービーで悲運の内ラチ激突事件を起こしてしまったトーセンスターダムと似たタイプか。
父が同じで、母父ミスプロ系。早めに前に取り付き、直線遊んでいる時外から交わされそうになるとまた伸びた。ただ、ここで負けるような相手かと言われれば…。様子見といきたい。重が苦手ということとは違う気がする。
東の1400戦(重)は、ダイワメジャー産駒のスペチアーレが快勝。重厚な欧州血統だからこその適性もあっただろうが、サンデー系の成功例に倣った形。大成できるか。
ここまで外れなしの函館新馬。1200で良で、10秒台の勝ち時計。スニッツェル産駒のキッズライトオンの番手抜け出しに文句の付けどころはない。ある意味困る。