何とかしたい -自由・放言の奨め-
順調にいけば、凱旋門賞は3人とも初騎乗。
優秀な競馬関係者の一族の出身という共通点はあるが、個性はバラバラ。
一人、騎乗技術ではとても敵わない父を持ち、有力候補で挑む新婚さんがいるが、この壁を乗り越えられたら、未来が開けると考えればいいだけの話。
あと、皆動物的感性の持ち主である点に、何かをしてくれそうな期待感がある。
今回の挑戦意義は、何より愛馬の能力を信じて戦う中でのプレッシャーが味わえることだ。
3頭を管理する2調教師は、海外での競馬でその時の厩舎の一番馬で勝った実績を持つ。
馬も人も初凱旋門賞。
騎手の技量不足なり、勝負勘や安定感に不安な部分が認知されている状況は、乗り替わりの最大要因であり、またそのせいで乗っている船から降ろされた例を挙げれば、枚挙に暇がない。
でも、乗り替わらなかった。札幌記念次第の陣営もあるが、馬は強いとだけ考えるのも大一番では、雑念が消えるので吉か。
そして、国際基準のトップサイヤーの産駒での挑戦というのは、意味が大きい。
1番人気で凱旋門賞に挑んだ日本のリーディングサイヤーなんて、もう出てこないだろう。
昨年は、アメリカ配合の芝馬で結果を残せなかったが、母父、母母父が欧州馬の桜花賞馬は、距離不安以上に適性面の利があるかもしれない。
須貝厩舎の2頭は、洋芝のレースであり得ないパフォーマンスを披露した馬と適性は証明済みの黄金配合馬。
騎手に注文の多い馬の方は、出遅れても頭数が少なければ、前年覇者のような仕掛けで勝負できる。
鞍上には、違う勝負の形を見出す創造力があり、2着2回男以上の好騎乗も期待したい。
サマーシリーズ注目馬
スプリント
1位 セイコーライコウ 13pt
このセイコーライコウは、スプリンターズSが新潟で行われることもあってか、そちらに直行の予定。
こうなってくるとCBC賞組と函館SS組が有利。
抜けた存在はおらず、また夏に順調に使われた馬の方がセントウルSでいい結果を出している傾向も、4戦目となる北九州記念で、隔年で登場する上がり馬が勝利した場合、北海道専念組にもチャンスがある。
現状横一線も、数で勝負できるエピセアロームと意外なスプリント適性を示したガルボには、タフに戦える強みがあり、有力候補だろう。
マイルは今年も星を分け合う可能性があり、フル参戦しないとダメ。
中京記念で復活を果たしたサダムパテックが、こちらも秋に備えるということであと2戦は回避。
関屋記念は登録馬だけ見てもメンバーが揃いそうな気配。そこでも好走できそうな馬が、今年も注目だろう。マジェスティハーツはその筆頭か。
2000
1位 メイショウナルト 14pt
メイショウナルトとラブイズブーシェが間違いなく有利。札幌記念にラブイズブーシェが出れば、Mナルトにはぐ有利に働くだろう。
札幌記念のメンバーが強力なことは事前に分かっているから、陣営に自信如何では道内の移動だけかも。
新潟記念が全ての鍵を握る例年通りの流れ。
だから、小倉記念で上位入線した2頭が、またMナルトに先着できるかがポイントとなる。
ちなみに、騎手部門はここまで対象レースで2勝した人がいないので、シリーズチャンピオン候補に跨る騎手にチャンスか。
田辺、和田両騎手が今元気なのでこのまま乗っていきたいが、善臣騎手の存在感はかなり大きい。
夏の修正
エアグルーヴとアドマイヤドンに共通項は多い。
母がオークス馬で、一族は押しなべて人気を背負いながらプレッシャーに打ち勝った者が生き残ることも同じ。
特にこの2頭の場合、トニービンの血を引いたサンデーサイレンスの入っていないGⅠ馬であることも特記事項だろう。
ドンの札幌2戦における陣営の狙いは、秋に向けた準備ともう一つ、軌道修正の意味が大きかった。
札幌記念では、古馬と戦う意義を求めたというよりは距離適性と芝のGⅠで通用するかどうかを確認。
一年後のエルムは、ずっこけ粉砕のフェブラリーSで受けた心的後遺症を癒しつつ、立て直しの成果を図った。
早熟のイメージが付きまとうティンバーカントリー産駒のこと。成長力の確認も必要だった。
ベガの3番仔だけ父が違う。
でも、競走馬になれなかったヒストリックスターもそうだが、インパクトではサンデー産駒のステークスウイナーにも引けを取らない。
3歳で札幌記念。ひとつ年上の二冠牝馬に完敗したあの日。菊の後はダートで、という判断を促した。
ドンの姪にあたる今年の桜花賞馬は、GⅠ5勝馬より少しだけ人気を集めてのレースとなるのか。進む道はそのままで。
乗り替わりのエルムS。
そうなった理由を掘り下げるよりは、ドンのことを考えての最善策と見るべきか。
何せ、この450kg台の中型馬はダートのGⅠで既に結果を出していたのだ。
思えばこの馬は、新馬戦はダート使っていた。この賢い馬に今必要なものは何か。
札幌記念でも人馬の呼吸を再確認する必要のある芦毛の二冠馬と共通する、今欲する何かを陣営は見つけ出した。ドンがGⅠ7勝馬となった理由が札幌にある。
早熟か持続か
これは血の宿命なのか否か。
ストームキャットを共通の祖父に持つ2歳戦のスターホースは、年明け後ここまで共に未勝利。
奇しくも、こちらも祖父が同じタガノブルグは、NHKマイルCで同じヨハネスブルグ産駒のホウライアキコを人気馬もろとも呑み込もうというゴール前強襲で、大いに見せ場を作った。
父が同じと言っても、結局は別物なのは百も承知で、それでも違う何かを求めていくのが今回のテーマである。
アジアエクスプレスの今後については、特に括目すべきものがある。類まれなる身体能力の高さで芝・ダートの垣根を飛び超えた活躍を見せていたが、久々のダートで恐ろしいほどに反応できず大惨敗。
「やっぱり早熟か?」
という評価も、当然出てくる。ストームキャットだからか…。
母父ストームキャットながら皐月賞3着と健闘したタイキシャトル産駒のメイショウボーラーは、芝の短距離に鉾先を向けて3歳秋までは踏ん張ったが、結局最後は、ダートでGⅠタイトルを獲得。その流れを見て、この早すぎる凡走を根拠とした早熟評は存外的外れでもない。
同じヘニーヒューズの日本の代表産駒であるヘニーハウンド、ケイアイレオーネらが、古馬戦で一発劇勝後は大不振であることも論拠をごり押ししている。
昔より大分減ってきた超早熟型。消耗を防ぐレース後のケアの選択肢増加が、再生を可能にしてきたのも事実。
一つ年上でBCディスタフ圧勝のビホルダーは、年明けの古馬初戦までは難なくクリアできた。
結果が全てとは思わないが、レパードSではせめても走る気だけは見せなければならない。
2歳秋の彼が、いずれは戻ってくると信じたいのだが…。
血視点⑩ 種牡馬ハービンジャー
ハービンジャーが日本に来た理由が未だ解せないままに洋芝の競馬が始まり、思ったより早くいい結果を出したその意外性について考えてみた。
トゥザヴィクトリーの全妹であるギーニョの仔・スワーヴジョージが、函館開催の最終週の芝1800Mで快勝して、産駒初勝利を決めたのだが、翌週開催の替わった札幌の開幕週でも、ジャズファンクが新馬勝ちしたからもう無視することはできない。
後者は祖母シンコウラブリイという良血馬。
ノーザンダンサーの入った良血牝馬との配合で、きっちり結果を出せた意味。
ハービンジャーを形成する父、父母父、母父、母母父にはそれぞれノーザンダンサーが含まれ、うち3者はその直系。欧州型の濃密な同系配合の権化を日本に連れてきたのは、それがこの国の主要血統ではないからである。
高いスピード能力と距離こなす粘り強さを兼ね備えたオグリキャップが、種牡馬として成功しなかった要因として、激戦の連続による消耗と自身より速い馬を生む才能に恵まれなかったことが挙げられる。
そのネイティヴダンサー系の繁栄は、快速レイズアネティヴを送り込んだからこそのミスプロ系の大成功に繋がったわけだ。
だからハービンジャーにだって、祖父デインヒルのような大種牡馬となり得る可能性を少ない大レース経験数から推論できる。
想像の域を脱しないが、オグリキャップとの違いがいい方に出るという見立ても無理筋ではない。
無論、血統構成は違うのだが。因みに、ハービンジャーの中にはネイティヴダンサーの血が6本入っている。
芝の根幹距離であるマイルのGⅠ馬を早くから輩出すれば、未来は開ける。