高松宮記念展望
ハクサンムーンの今期初戦直前。
その裏で、期待の候補はことごとくオープンクラス快勝後に敗戦を喫し、勢いがなくなってしまってきた。あのロードカナロアでさえ、馬場状態と重賞経験の浅さが災いして人気を裏切ったほど。
リアルインパクトは復調気配だったが、阪神Cを実力で制したとも言えないから取捨難解。
そこで不発に終わったコパノリチャードは、阪急杯を圧勝した。同じ距離で、季節柄馬場差もそれほどではなかったはずなのに0.7差あったから、リチャードがいかに前回凡走していたかが分かる。この勝利で、彼は有力候補の1頭に加わった。
リアルインパクトは、今週末1200適性を見出したい。
シルクロードSは年初からずっと高速馬場だったせいもあって、かなりの好時計決着。2月開催以降でのレースレコードでストレイトガールが快勝したが、平坦巧者であることは間違いなく、ロードカナロア臭もしなくはない。こういうタイプは、陰ながら力をつけて人気になる前に一気に大舞台で…、に期待するより他ないか。
番組の多い短距離準オープンの勝ち馬からも穴候補は毎年のように現れてくるが、路線の整備が進んで、この時期になるともうオープン特別がなくなってしまうから、結局重賞の格を身をもって体験している馬が有利。
なので、阪急杯で出遅れながら大混戦の2番手争いに加わってきたラトルスネークの末脚に脈ありとみた。
それなりの登録頭数になることは予測されるが、コパノリチャードの快走以降、何でもアリ状態の競馬が何となく続く雰囲気もあるから、こういうよくわからない空気感を持つタイプにはちょっと肩入れをしてみたい。
クラシック展望②
まずは、きさらぎ賞。
ここは勝負のつく一戦ではなかったから、互いにダメージは最小限だったように思う。
競馬が上手いとは言えないバンドワゴンを、巧みなエスコートで幾分ズブめのトーセンスターダムが交わしたという結果から、大舞台で変に細工をして惨めな姿を晒すような愚策が禁じ手であると、きっちりと陣営が把握できたなら、あとは念入りな準備をするまでだ。
ポテンシャルの差は着差分だけ。トーセンの半歩リード。
先日の共同通信杯は、前週のクイーンCでがっつり行きたがっていったものを見事に抑えこんだベテランの手腕も高い期待に繋がった。結局、蛯名騎手は変則開催の重賞を全勝した。
イスラボニータは、負けてはまずい条件を勝ったまでだが、そこは他より1kg重い斤量。55から56ではなく、それが57に変われば、つまりクラシック本番での負担重量と同じというのも強調点。
より自分の形をはっきりさせた感じで、追い込む競馬を選択することは考えにくい。
フォーエバーモアのレースぶりに関しては、序盤こそ危なっかしかったが、脚質面の特性か安定感があった。
お互い、自分から動けるのは大きい。
その他条件組では、新馬勝ちのレッドソレイユと平場ながら好カードの東京1800戦を勝ったロサギガンティアというチーム藤沢の2頭。
あと関西馬から、春菜賞のヤマノフェアリーと渋い梅花賞の勝ち馬ヤマノウィザードは押さえたい。
後者については、負かした相手がもう次戦で2頭も勝っているから要注目。
天の配剤は、人気馬の才能を際立たせたが、負け組の現時点からの軽視も早計すぎる。
あの雪にも、きっと意味があるはずだ。
血視点⑤
ダートツートップ
フェブラリーSはお手上げだったが、そこで人気だった2頭の父キングカメハメハは、現役時に管理していた松田国英調教師が秋のGⅠでその成長力を披露できなかったことに、非常に悔いが残っていると語っていたのが印象深い。
図らずも、夢の続きを体現した産駒たちは、女傑エアグル-ヴとの間に生まれたノンSS配合の内国産最高峰たる存在であるルーラーシップを筆頭に、いくらか奥手の傾向にある。
サンデーの血が入っているから、ベルシャザールはクラシック戦線に乗ることもできたが、不良馬場のダービーでは、体が大きすぎてかなりもたもたしながら、ナカヤマナイトを制して3着。休養を経て、今に至る。
一方のホッコータルマエはというと、最初から最後までダート道を進もうとしていた馬が、この次は特殊条件に挑むわけだから、是が非でもフェブラリーSは勝ちたかったはず。
ミスプロの血が母方にもう一本入っていて、パワフルさを強調された印象も決め手は永遠の課題。
本質スピード型でも、芝オンリーのタイプではない。
だから、母父サンデーでも芝向きのサインとは断言できない。
ただ、スピード能力が特長の系統から出てきたチャンピオン血統同士だから、結局は本質が似かよっていて、お互いの長所を相殺してしまう可能性はある。
大型馬だから、という理由だけではないだろうし、
万能血統だからこそ、ミスプロクロスがその適性を明確にさせたのだろう。
かなりスピード寄りの配合だったアパパネやロードカナロアは、芝の時計の速い決着で何度も結果を出している。
次戦は果たして。「ダート」ではないから、自由な想像力で挑みたい。
最後の一花 ヤマニンシュクル(前)
今でこそマックーンのことばかり語られるが、ちょっと前まではテイオー産駒がよく走っていた。
トウカイポイントがマイバブー系に久々のGⅠをもたらし、ストロングブラッドが今はもうない重賞でやたらと勝負強さを見せていたあの頃。
ドラマチックホースの宝庫・01年生組がデビューし始めてすぐ、函館1800の新馬戦で見事な勝ちっぷりを見せたテイオーの娘が、後に活躍するヤマニンシュクルである。
道悪の札幌で牡馬相手に繰り返しスパーリングをした2か月後、彼女は阪神ジュベナイルフィリーズに挑む。
スイ-プトウショウや札幌で先着を許したアズマサンダースなどの実に骨っぽい馬相手に、大外を伸びてゴール前人気薄のヤマニンアルシオンを捉えきって2歳女王に輝いたのは、もう10年と少し前。
この頃まで存在したいた、懐かしのトリッキーコースの代名詞「ポケット」地点発走の少女決戦は、2年半後の春まで続く。
クラシックではダメ、という2歳激闘史における通説は、この年も該当。
同期の最優秀牡馬コスモサンビームも、春のうちに燃え尽き、秋以降は療養に入ってしまった。
対社台、対サンデーという裏テーマが、この世代のみどころ。
牝馬勢にも前記のスイ-プに加え、同冠名のアラバスタらもいて盛り上がりをみせた。
そこでシーズンの始めと終わりに輝きを放ったスイ-プとシュクル。
秋華賞で馬体を併せてゴールしたシーンは、まるで古馬戦での再会を誓いあっているかのようであった。
が、これも血の定めか。
長期離脱という名の呪縛に、彼女もまた苛まれる。
やはり、血は争えないもの。切なくて儚い少女の季節…。
雪降る競馬場で
「ホクトベガ」
交流戦初期のフェブラリーS。この年を境に、冬の名物重賞はダート競馬の最高峰へと進化するのである。
そんな時期だから、川崎記念を圧勝してもここでは僅差ながら3番人気。
雪に霞む神秘的な雰囲気の中、後にクロフネが見せるような捲り上げから、最後は流してゴール。
1年後、砂の王国で彼女の運命を分けたものは、いつもは降らないはずの雨であった。悪戯が過ぎる。
「カレンブラックヒル」
新馬快勝後、2戦目のこぶし賞では期待を背負っての参戦。
道中は晴れたり曇ったり、雪が降ったり。
競馬そのものは、さっと前に取り付き、終始楽な手応えで回ってきただけ。
ゴール前では、冬の柔らかい日差しが各馬を包み込んでいた。
この後の彼の競走生活を、象徴するかの如き空模様。晴れて1着ゴールを早く見てみたい。
あの成人の日の最終レースを勝ったのは、
「ガイヤースヴェルト」
キズナ相手に初芝をものともしなかった毎日杯での激走は、記憶に新しい。
元より雨に降られ、ずっと止まずに雪も混じってきてから第1競走が始まったから、この4レースの時点で、ダートコースにはかなり水が浮いていた。
芝も積雪をし始めた頃、ゲートが開いた。
向正面を駆ける出走各馬の走りは、アップで映し出せば出すほどその概要は見えにくくなり…。
一周した最後の直線、さっき通ったコース上にはもう雪が積もっていた。これで降参。
あれから一年。人間の側は相変わらず雪に翻弄され、学習の成果は今一つといった印象。
風情も何もなくなった雪の脅威にただ慄くだけだ。
ダート戦中心の番組編成の本質を今改めて見つめ直せば、その打開策は導きやすくなる。