ドバイ前哨戦
ホッコータルマエ
「ドバイに行きます。勝っていきたい」
ベルシャザール
「ドバイに行こうと思っています。勝たなければならない」
両陣営の本音を察すれば、やっぱり勝っていかないと意味がないと、なるはずだ。
フェブラリーSの勝ち馬が、ナドアルシバ時代も含めてドバイミーティングのいずれかの競走で勝ち馬として名を刻んだことは一度もない。
好走馬はいる。しかし、その時勝った馬の方がずっと強かった。適性も相手の方が上。
トゥザヴィクトリーがここで3着後にドバイで見せ場を作ったが、彼女は芝がメインステージという馬。持っている武器の性質が違う。
フェブラリーSの価値が問われている。
しかし、結果はもう出ているのだ。速い馬じゃないと勝負にならない。
言い換えると、日本のダートで中団以降から追いつめるタイプは、絶対的にスピード能力が足りていない。
ワンダーアキュート陣営などは、
「自分のできることを精一杯やりたい」
と、色気たっぷりで逆転の構想を練って挑んでくるだろうし、この1年比較的楽なローテーションで余力十分のニホンピロアワーズが秘める
「意外なマイル適性」
という可能性も否定できないから、知ってる顔でさえ案外高い壁だったりする。
ベストウォーリアやブライトラインなども王者の首を狙っているし、ゴールスキーの上昇力も侮れない。
今週末こそ、普通にできそうな東京開催。
アドマイヤロイヤルやシルクフォーチュンも…。スピードで彼らを上回ることが至上命題。
まず、ここで見せ場を作らないことには…。スピード能力でも他に劣らぬはずの当地への招待者2名には、世界レベルの底力を証明する義務がある。
血視点④ メイショウマンボ
スズカマンボ×グラスワンダー。
春の天皇賞勝ちやグランプリ三連覇など、誰でもできるわけではない実績を残した名中距離馬同士のカップリングで、オークスの好時計勝ちにも納得はいく。
距離延長に融通の利く点も似ている同士の配合は、また似たような血統構成同士の配合でもある。
ヘイルトゥリーズン
ミスタープロスぺクター
ニジンスキー
それぞれに4代目以降のクロスを有し、加えて双方共通のノーザンダンサーの血が2本ずつ計4本の継続クロスが掛かっていて、レイズアネイティヴの連続的なインブリードも施されている。
大種牡馬の強くはないクロスを幾重にも重ねているのが特徴的。
同期のエピファネイアと血統構成の点で酷似しているが、彼の場合は、たまたまいい相手が同系であったというだけで、父と母父ともリボーという底力補強の鋼材も配合されているメイショウマンボの方が、より作為的なインブリードであることを感じさせる。
母系は、大昔にダイコーター(菊花賞馬)を出した在来牝系のダイアンケーを牝祖とする渋すぎる系統で、決して活躍馬が多い一族ではない。母は未勝利馬。
母母父がジェイドロバリーで比較的柔軟性を持ち合わせるが、祖母が母父ミルジョージにも関わらず、西の4歳牝馬特別で2着するなど芝の短距離で活躍。
その奥はドイツ血統のような重厚な系統が居並ぶ構成も、鈍重過ぎないが、現代の時計勝負に向く性質は持ち合わせない。
1400の重賞を勝ち切った潜在的なスピード能力は祖母から受け継いだと考られる。
穴でこその魅力も含め、父の血をしっかりと継承していることに愛着が生まれるのも自然な流れだ。
あの京都記念
ミレニアムイヤーのとある日曜日。
奇跡の3強対決を目撃する暮れの土曜日に、牡馬クラシックでの兄弟弟子対決やその弟弟子のまた弟が初GⅠ制覇を果たした年の2月のこと。
フェブラリーSでウイングアローが優勝し、見事工藤調教師の引退の花道を飾ったその10分前。
キングヘイローの参戦で変に盛り上がった部分もあったが、最初からファンの楽しみは二つで一つのワンセット。
そのもう片方が、パーフェクトゲームの起点となった京都記念である。
個性的な4頭が、この先の輝かしい未来を暗示するかのような走りで多くのファンの期待に応えてみせた。
①テイエムオペラオー
②ナリタトップロード
③ステイゴールド
④ミスズシャルダン
以下ブリリアントロードらが続いた11頭での競馬は、1~5番人気の順で掲示板が埋まる。
主役のオペラオーとトップロードの1kgの斤量差。
(オペラオーにはGⅡ勝利経験がなく、トップロードはGⅠ・GⅡで3連続連対していた)
このレースの好走で弾みをつけて、種牡馬としての道に繋げた2頭。
ステイゴールド 三冠馬と二冠馬を送り込む
(この年の春に初重賞制覇し、翌年に大暴れ)
ミスズシャルダン 少ない産駒の中からサンレイジャスパーが登場
オペラオーがトップロードに着差以上に力の差を見せつけた競馬は、有馬記念の4cm決着に続いてゴールした実績が、そのまま底力と成長力の差を如実に示していると証明する結果となった。
関東馬が強い時代のAJCCにように、この頃から京都記念は時代も変わり、世界基準の前哨戦として昇華してゆく。
そのエポックメイキングの一戦が、2000年の京都記念である。さて、今年は?
雪の功罪
今年も開催中止の憂き目に…。
昨年1月のひと騒動を経ているから思うこと。
述懐と教訓。傾向と対策。
反省の仕方ひとつなのだが、まだまだ対策は不十分だ。
土曜開催の月曜代替案を即時決定した点は、問題なし。
予報を見る限りでは、月曜はほぼ間違いなく開催可能だった。日曜日に大半を除去できれば、馬場悪化も防げるという算段もあったろう。
昨年の成人の日を襲った大雪は、予定されていた変則開催3日目に降った。
その日のメインだった京成杯の翌週移設はいろいろ物議を醸し、その翌週日曜の中山メインでは、あの斜行があって…。あのゴタゴタはもう勘弁だ。
問題は、東京新聞杯を含めた日曜開催分の方である。
前日の作業があまりに予定調和でいったものだから、日曜はできるのではないかと期待しすぎたのだろうか?
結果、記録的な積雪量を記録した天の采配の前に撃沈。
また、今年はよりによって火曜日は祝日。
そこを突くのは本質論と関係なくなるから、野次馬の放言に一定の結論を求めるとするが、春にも3日間開催を設定したのだから、冬に3回も作らなくてもいいと思うが、どうだろうか。
結局、今週末は4重賞開催。日曜日は前週以上に盛り上がるとも思われる春の息吹を感じさせる東西重賞が、ファンを楽しませてくれるわけだが…。
この移設を可能とした法律の本質は、開催日程を変更を気ままに可能とするものではなく、ファンに有意義な3連休を過ごしてもらうためのものである。もっと分かりやすい形を体現する義務が、主催者にはあると思うのだが。
これ以上勝手に振り回される事を、有識者たる競馬ファンが許すはずもない。
もしかすると今週も…。
2014年期待馬⑤
ゴールドシップ
フェノーメノ
ステイゴールド産駒は孤高の存在となった時、底なしの破壊力を体現する。でも、その後どこかでミソもつく。
ゴールドシップが、何とか持ち直してくれた有馬記念。
騎手が注文をつけたところでそれに応えてくれるような、移り気な性質の持ち主じゃないから、内田騎手に手が戻る可能性はわずかながら残っている。
馬の好き嫌いがはっきりしていて、たまに走らなくなるのも判る。ただ、人間側が走らせそうとし過ぎている点は、大変気掛かり。
馬の心を傷つけてしまっては、何の意味もない。
オルフェの場合、最後には己を主張することを人間側に受け入れさせた。自然体がよい。
復活の待たれるフェノーメノ。彼は、案外ステイゴールドらしくない。
時計勝負を好む東京巧者で、本質は長距離に向くタイプではない。母の父はデインヒル。
そのため、春はステップアップのための準備期間となる。本当に獲りたいのは、秋の東京のビックタイトルだろう。無理なく調整したい。
さて、この2頭は天皇賞に出てこられるのだろうか。
キズナが勝ち気で挑んでくるとも思えないし、エピファネイアが距離を理由に香港遠征を念頭に置いている節があるから、今年も波乱のパターンだ。
一方、このステイゴールド産駒の同級生2頭は、得意条件に臨み、一定以上のモチベーションを持っているとしっかり走る。
対抗馬というスタンスで挑めるならば、彼らの底力は最大限発揮されるだろう。
走る気にさせたいと気負わずにいれば、ステイゴールドの仔は自ずと走ってくれる。
希望はしても、無理に実現してもらわなくてもいい夢。クラシックと古馬GⅠは違う。