一本槍のGⅠ戦記
ジャスタウェイ
今でこそ英気を養っているが、昨年秋の毎日王冠以降コツコツ使われること9戦目。
その秋の天皇賞で我々が目撃したパフォーマンスは、後のJC優勝馬を全く相手にしなかったという点にだけ着目しても強烈だった。まさに歴史的一戦と呼ぶに相応しい競馬。
好位抜け出しも何度か試して、中山や2200Mなど色々な条件に挑んではことごとく人気を裏切ってきた。
戦前は3戦連続の2着。イマイチ君の完成形が、ついに大一番で披露されると思っていたら…。
槍の強みは、自分の形で勝負できること。
だから、このレースは自分のやりたいこととみんなにお願いしたいことが同時に叶った一戦だったのである。
驚異のポテンシャルは父も秘めていた。信じがたい末脚の源を辿れば、血の物語に収束する。
クロフネサプライズは武豊が乗ってから一貫性が出た。
出来れば先手は取りたくない…。でも、チューリップ賞を逃げ切ってしまったがために、本番も逃げるしかなくなってしまった。
一方で、ハクサンムーンは強くなった。高松宮記念で坂をこなしてみせた後、一叩きされてから重賞2連勝。
成長の証は、ロードカナロア退治で証明できたのだが…。
ともに本番では相手が上回った。逃げ馬はやっぱり辛い。トウケイヘイローも香港Cは2着だった。
デニムアンドルビー
出来ることとできないこと。
いい位置はとれないけど、直線が長ければいい脚を使ってくれる。
いいところだけを見て…。
ジャパンカップはフィリーズマッチレースになった。
いつもより遅い時間から始まった夕刻の華やかな宴。よく頑張った。悔しいけれど…。
全てはここから始まると信じたい。
ダート路線復習・展望
これから佳境を迎えるダート路線。
まずはレース回顧から。
フェブラリーS
実績不足も人気に推された4歳馬2頭が飛び、GⅠ実績と上昇力で上回る古馬陣が台頭。強い8歳世代が2着。3~9着までを7歳馬が埋めた。勝ったグレープブランデーは5歳。彼らより決め手で上回った。が、レース後すぐ休養へ。
JCD
キレ味、上昇力、GⅠ実績はグレープもベルシャザールも似たようなもの。ただし、スペシャリストというよりは、この形ならの勝負を制した分、今後じれったい季節が続くことも推察される。
レースレベルは高く、負け組はすぐに巻き返せそう。
地方主要競走
ホッコータルマエとエスポワールシチーがフリーパスをフル活用したかのような交流GⅠ。
牝馬重賞5戦5勝のメーデイアと、JDD7馬身差圧勝のクリソライトが登場するも、JCDは見せ場なし。地方よりは差しが決まりやすいのが、ちょっと残念。
短距離
高齢化問題は深刻。笠松の女王・ラブミーチャンは意地を見せて重賞を制したが、エスポとともに引退。
テスタマッタ、セイクリムズンも7歳なので、ノボ軍団の再来も…。ドリームバレンチノが少し顔を出してきたが、今6歳で明けたら7歳…。
東京大賞典展望
JCDの結果を見てしまうと、2、3着のどちらか…。それに反抗できそうなのは、
ローマンレジェンド
ニホンピロアワーズ
ソリタリーキング
くらいか。
フェブラリーS展望
ホッコータルマエは今年パスしていたし、引き続きベルシャザールに有利ではあるが、使える脚が短いという可能性も。
JCDとの出し入れを考えると、みやこSの1、2着馬は巻き返せるかも。
上がり馬も要警戒。
2歳馬選定・選抜
アルテミスS
新潟2歳Sはひと息入った後で、この時は叩き3戦目。中間芙蓉Sを快勝。1番人気は飛んだが、マーブルカテドラルの勝利に異論を差し挟む余地はない。
東スポ杯
レコード決着。好勝負を演じたイスラボニータ、プレイアンドリアル両頭は立派なステークスウイナーだ。
無論、牡馬の中ではだが…。基準レース。
京都2歳S
新馬との違いは、こちらが相手を見ながら競馬したのに対し、新馬は能力値そのもののを騎手が測っていたところ。2戦目は平均的な流れを差し切り勝ち。結果、末脚で勝負できる馬だと判明した。
他にも1400重賞が行われたが、やっと牡馬でも目ぼしいのが出てきたので、そちらをピックアップしたい。
特に、黄菊賞レコード勝ちのトゥザワールドは、奥手の牝系にしては早めのオープン入り。兄より出世するかも。
百日草特別勝ちのピオネロ、ショウナンカンプ産駒で早くも2勝目を挙げた同じ冠名のアチーヴとワダチは、成長力を秘める血統なので軽視できない。
ダート路線もなかなか。東京で連勝したアジアエクスプレスはGⅠを狙える器。
レーヴデトワールは、オープン再挑戦がJFのようなので注視したい。
新馬組は厳選2頭。
アスコルティ
ダンスアミーガ
の牝馬2頭。
他には、未勝利をレコード勝ちしたミッキーアイルが注目。
現時点のトップホースは、
牡馬
イスラボニータ
トゥザワールド
特注
トーセンスターダム
牝馬
ハープスター
ホウライアキコ
特注
マーブルカテドラル
層が薄いのと厚いのと両極端なので、GⅠ前は変に詮索しない方が得策だろうと思う。
若駒には必ず欠点がある。だから、今結果を出ている馬にそれは少ないのだ。
流行探訪
武豊の抜け目ない騎乗を、この秋久々にGⅠで堪能できている。
サマーシリーズが好成績だったから伏線はあった。
ただ、そこで主役を演じた岩田・内田両騎手の方は、秋になって今まさにどん底というような状態。大一番でなかなか出番が回ってこない、歯痒い日々が続いている。
一方、福永騎手が夏までとは一変し、10月に突如開眼。
人の親になるとこうも変わるものだろうか。リーディング単独トップ。エピファネイアに感謝。
勢いでは、田辺裕信に勝る者はいない。重賞3勝は全てこの秋に制したもの。
オールカマーでは、自身約2年振りの中央の重賞勝利。
東スポ杯こそ回ってきただけだったが、その前は2週連続2歳重賞制覇。
三十路を前に、こちらも脂が乗ってきた。
夏はボールドルーラー系のパイロやシニスターミニスターがよく激走していて、2歳戦ではヨハネスブルグが大挙して活躍馬を送り込んでいた。
今はハーツクライとディープインパクトがにらめっこをしていて、ステイゴールドが少々躓き気味。
フジキセキ産駒が11月元気なのは意外だが、前哨戦で好内容というのは通常通りか。
この傾向の流動性は面白い。
調教師部門は、ブッ千切りで角居師。
GⅠで2着に泣くこと3度。
古馬の主力級は少々層が薄く、3歳馬の才能に頼らざるを得ない状況下で、混戦のエリザベス女王杯では手駒を多数出走させ、きっちり2頭が掲示板に載って面目を保った。
福永&エピファネイアの鬱憤晴らしばかりが目立っているが、早々に年間50勝を決め、もう誰も追いつけそうにない。
デニムアンドルビーとフリートストリートは両JCで注目。
来年2歳馬はいない。
底力を感じる。
短距離路線回顧
この路線は重賞が二つ残っているが、マイルチャンピオンシップで一段落。これからは、来年に向けたレースが始まる。
まあ、ゴッド・ロードカナロアが年末の香港にでラストランを迎えるので完全に終わりというわけではないのだが、それはあくまでもエキシビジョンマッチ。挑戦で終わる王者の戦い方は、実に意義深い。
ダノンシャークが初重賞制覇を果たし、年末にはサンカルロが阪神カップ連覇。
ここ数年の傾向に倣い、一定以上の経験を積んだ古馬が充実期にあることを示した。
しかし、放し飼い状態だったゴッドの復帰後は、新興勢力がことごとくおもちゃにされてしまった。
トウケイヘイローやダイワマッジョーレが出現するも、大勢は変わらず。
夏は夏で盛り上がった。
先行タイプのハクサンムーンとフォーエバーマークがスプリンターズSまで出て来てレースを盛り上げた。
パドトロワの復活、ツルマルレオンの激走とリタイアなど事件なサマーシリーズだったが、最終戦でロードカナロア敗れる、というセンセーショナルな一場面を演出したハクサンムーンの快走に、ファンは胸のすくような思いを共感した。
一強でも役者の多かったスプリント戦線とは対照的に、マイルの特にGⅠ2戦は他流試合といった趣に。
ロードカナロアとトーセンラー。
ショウナンマイティとダークシャドウ。
そして、ダノンシャーク。彼が脇役では、マイラーに出番なしも頷ける。
トーセンラーがチャンピオンになった理由は二つ。
本質的に向いていた。
ライバルの上昇力がGⅠに挑むにはあと一歩足らなかった。
全てうまくいったのも確かだが、必然の流れにも思えてしまう。来年こそは…。