何してんだ‼ -自由・放言の奨め-
凱旋門賞に向かう男馬2頭の背中を知る3人の騎手。
スイッチマン・秋山真一郎。ともに降ろされたウチバク。あと一人、ともに一戦必勝のノリおじさん。
ただ、本来彼らは今でも内田博幸のお手馬でないといけないのだ。
須貝調教師にゴールドシップのオーナーサイドに三下り半を突き付けられた頃には、ジャスタウェイも前に乗っていたユーイチの下に。
ヴィルシーナのVマイル連覇で一矢報いたというのでは、名うての腕利きも落ちたなと言われるだけ。
思えば、彼らを不自然な理想形で勝利へと誘った横山とて、半年くらい前は大一番での勝負運のなさを見せ、地味に恥を晒していた。
個性派に頭を悩ませると、勝負勘が狂う。馬の良さを冷静に見極めていきたい。
ジャスタウェイの主戦とて、安泰ではない。
内に潜り込む込むべき時にそれをせず、それを避けるべき時に内に入れてしまっていた。
特に、京都金杯の1馬身半差はそのまま判断力の差だ。おまけにペケ3つ。
トーホウアマポーラもジャスタウェイも外から差すのが自分の形だろう。でも、それは競馬学校に行ってれば誰でもできる。
凱旋門賞で勝負するなら、ノリ仕込みの好位抜け出し策が基本線。
中山記念のVTRを100万回見なさい。きっと、キネーン駆るシーザスターズの姿とリンクするはずだ。
再びのミスが許されるかの議論は置いといて、ハープスターを正攻法で負かした岩田康誠の騎乗は素晴らしい。
騎乗馬の質が低下している時だからこそ、この勝負師としての生き様をもっと称えようではないか。
あと、石川裕紀人君。焦っちゃダメ。競馬は一番最後に仕掛けた者が有利である。
須貝厩舎の闘い
師が騎手時代にアンブラスモアで小倉記念を逃げ切ったのは15年前。その後、勢いに乗って天皇賞も6着と健闘した。夏が始まり、今年も熱い秋になりそうな風を感じる。
個性派5歳ツートップの凱旋門賞挑戦を否定的に捉えている人は少ない。
圧倒的な爆発力を十分に堪能させてもらいながら、我々は新しい刺激を求めるべく、世界の最も高い壁を突き破れそうな素材を自然とプッシュしているのだ。
エルコンドルパサーに学んだ、慣れることと知ることの重要性。ジャスタウェイの父・ハーツクライは、絶好機をモノにして海外遠征を成功させた。
順序良く、それが苦手な分野かどうかを分別する結果を得て、敢えて夢を追いかけた陣営の判断は、安田記念参戦への疑念は残るものの、決して無謀な企みとは言えない。ドバイでの走りは傑出していた。
距離への適性と馬場へのフィット感では、歴代の好走馬に優るとも劣らぬものがあるゴールドシップ。
馬柱に記載される血統情報は、母名の欄以外はオルフェーヴルと同じ。着順がその上を行けば言うことなしだが。
絶好期は昨年だった気もするが、馬にも選択権がある。人は責めずに、自己主張をする馬だ。
レッドリヴェールも秋は課題克服の季節。
連続出走解禁するのは、この秋だと決めていたはずだ。
ストレスのかけ方とその除去の仕方。今までが少し不自然だっただけで、結果はそれなりに出した。
ハープスターは、不満は残ってもロンシャンへ行く。これは自然な流れだ。
休めずも勝手に走らなくなる狡猾さが共通項。無理強いを避けることで学んだ効果は、3頭の春の走りにきっちり反映された。
楽しみが先行する秋になる。
夏の秘策
エアグルーヴが天に召され、もう5つの季節が過ぎ去った。
元祖・年度代表牝馬。いつの間にやら、男に不利な出世構造という不興を買う時代になっていた。
17年前、実力勝負の世界から発信されたメッセージ。
オークス-秋華賞直行のパイオニアでもある女帝の刻んだ蹄跡は、名人たちの技量に恵まれた競走生活でもある。
先を見据えた使い方は、当時あまり好まれなかった手法。恐らく、疲労回復も脚元への負担もギリギリのところだったのだろう。だから、秋華賞では骨折した。最善策をとったが、好結果には繋がらず。
主戦・武豊騎手は、その年に念願のダービー初制覇に打ってつけのパートナーを見つけ、その前の週に前祝いとしてオークス連覇で景気づけ。
でも、桜花賞と皐月賞はお互いパスしてしまい、三冠の夢を断たれた後の目一杯の大勝負。どちらかが一冠目に出ていれば、未来は別物だったのかもしれない。アレがない馬でも、ダービーには出られるわけで…。
ファインモーションとアドマイヤグルーヴの時には、明確な使い分けがあった。別の厩舎とはいえ、愛娘の仔が連覇を懸けて戦おうとしているのだ。
エリザベス女王杯とは因縁浅からぬ師の恩情と、騎手に対する敬意。
伊藤雄二という人間は、真っ直ぐに生きる信念の男である。
骨折明け2戦目に札幌記念を選択。
夏競馬に誕生した初のGⅡ戦で、再起を賭けた勝負を制した。
結局2連覇を決めて、秋への飛躍に繋げた。今よりは牡牝の力差が大きかった時代の話。
グルーヴ以上に才能のある牝馬がゴロゴロいる時代にあっても、馬を扱う人間の目に狂いがあれば、それは失敗の最大要因になってしまう。
感謝、感謝。
不可侵領域
今年ここまでの中央重賞は、9割方サンデーサイレンスの孫が制していて、前期のGⅠレース全てをその孫の世代の馬がジャックした。
ダート路線を見ても、交流GⅠのかしわ記念もフェブラリーSを勝ったコパノリッキーが制し、スピード戦でダートチャンピオンロード向きの馬では、なかなか歯が立たないことが、改めて露見したのであった。
しかし、それ以外のGⅠでは、ホッコータルマエ、ワンダーアキュート、カゼノコと、言うなれば「アウトサンデー」血統が、人気のインサンデー馬をねじ伏せ、存在感を示した。
そして、今年中央重賞を制した唯一の外国産馬であるベストウォーリアが、今年のダート主要競走を制したサンデーの孫を相手に、人気面でも実力の部分においても圧倒するような競馬で、自身にとっても待望の古馬重賞初制覇を果たした。
結論としては、時計が出やすい馬場でも芝のキレ味勝負のような上がり33秒台の脚を要する展開とはならないから、五分に戦えるということだろう。逆に言うと、芝を走れる能力を秘めている馬であれば、素軽さを武器とするインサンデー馬をアウトサンデー馬が負かすことは、そう難しいことでもないのである。
中でも、カゼノコという才能は魅力的だ。
父母とも、450kg前後の小柄な体を駆使して活躍した馬だったが、その仔もまた同じような体で末脚を武器に、中央馬並みの血統を持つ地方の雄をゴール寸前で捉え、三冠阻止。
サンデーの血の入ったこういうダート馬は少ない。おまけに、その末脚に屈したのはサンデーの孫。
血統の優劣を直接反映した競馬ではないが、このスポーツの奥深さが凝縮された一戦だった。
2歳馬選定①
函館2歳Sから。
逃げなくても勝てる馬が逃げた時には、想像以上の優位性を生むという好例。
アクティブミノルの良さは、後続を突き放す逃げではなく、決して自分に近づけさせない末脚の確実性にある。
快速型中距離馬の代表格であるミホノブルボンやサイレンススズカにも通ずる、総合力の2週連続逃げ切り勝ち。
だから、この中に未来の名スプリンターがいたところで、それを封じ込む強みが活かせないのであれば、力及ばずは当然のことなのだ。残念ながら、アクティブミノルを距離延長で負かせそうな馬はこの中にはいなかった。
この距離で再戦する時に、他の15頭はどれ程成長しているだろうか。
その他の期待馬は、芝の新馬勝ちの組に限定する。
1400M以下
6/14 東京1400 ホワイトエレガンス<牝>
6/22 函館1200 アールブリュット<牝>
7/6 中京1400 コートシャルマン<牝>
7/20 福島1200<稍>コウソクコーナー
牝馬の3頭は、共通して早熟タイプの印象は受けなかったから、クラシック路線に乗れるかがカギ。
コウソクコーナーは長期の活躍に期待。
1600M以上は、絞り込んで2頭。
7/6 福島1800 フォワードカフェ
7/20 函館1800 スワーヴジョージ
他にもいい馬はいたのだが、特にアヴニールマルシェ(キョウエイマーチの孫)やティルナノーグ(Nヒルズ所有)といったディープ産駒は、前者は成長力がないと辛いし、後者は高速馬場での反応に不安があったため評価保留。
阪神組が案外。中京組が普通で、福島と函館はなかなかだった。
牡馬は強い世代と見たが、その見立てが修正されないクラシックはきっと面白い。