ジャスタウェイの謎
「普通は走らない配合」
ジャスタウェイは、イレギュラーな才能である。
競走馬としては、決していい配合ではない。
フィリーズサイヤーとしてなら成功を収めるかもしれない。
そんなこと言うと鬼に笑われるか。
具体的に見てみると、父ハーツクライにはトニービンとリファールが入っている。
ダイレクトに各々をとり合わせると、何をしでかすかわからないことは想定されてたはず。だから、普通のサンデー産駒より個性が強い。
一世一代の大駆けとなった2度目の有馬記念では、今までとは違う戦法で後続を封じたのだから、本当に不思議。
ディープ親仔に屈辱を味わわせたハーツクライ親仔。
それぞれリファールの血を共通して持っているが、特徴である重厚さをディープは底力に転換し、ハーツクライはそれを活用しきれず不器用さの源となった。
ジャスタウェイの牝系には、トニービンと相性のいいハイぺリオンの血が5代以内に5本。
トニービンの後継種牡馬ジャングルポケットも、同じ括りで9本入っている。
でも、インブリードの影響は小さく、この馬の基本能力はハーツクライによるところが大きい。
だから、欧州型の一流種牡馬を母シビルに配してからハーツクライをつけたらクラシック本番でも…。
もちろん、変にまとまりすぎて底力が半減するリスクも伴うが。
姉はバクシンオー産駒のスカイノダン。南半球のスピードタイプの種牡馬とは相性良好か。
弱点を補完する配合ではないのに、天皇賞圧勝。この結末はとても読み切れない。
あまり日本になじみのない血統が多く、色々なタイプの繁殖牝馬と配合してほしいが、ベストパートナーはどこにいることやら。
秋GⅠ前半回顧
順当に収まった最初の3戦。
人気上位馬が勝ったというよりかは、一番強い馬がきっちり結果を出した感じ。
「こうあってほしい」
至極真っ当なGⅠレースらしい展開に、強い競馬だったという満足感がファン、関係者すべての共通認識。
シーズン序盤は、上々の滑り出しとなった。
3レースに共通する強いとファクター。素晴らしいのは、一番体調の整えにくい秋口のレースで、春の強さに安定感を上乗せできたこと。
エピファネイアは、世代のトップホースだから連勝も当然なのだが、その前の2レースの勝ち馬は前哨戦で敗退。
勝ち馬の強さも目立ったから不穏な空気にもなったが、押さえるところは押さえるという内容の競馬で他馬を完封した。
一方で、秋の天皇賞は1強が崩れた競馬。
勝負師の中には、エイシンフラッシュに期待を寄せる声も。
古牡馬の層が遠征・回避馬のいるせいで大分薄かったので、ジェンティルの東京適性以前に、現状のこういった力関係であまりに過剰な評価がなされているから、弱くはないが、少々推しづらかった。
結果、本命、対抗馬ともにジャスタウェイに全く歯が立たず。ジェンティルとは初対戦も、衝撃的な結末に。
ハーツクライと福永祐一。もう負けたくない、という強い意志が走りに現れていた。
が、勝ち馬JC回避を早々に表明、凱旋門賞組は暮れの大一番に照準を絞った。
チャンピオン路線は少々消化不良だ。
最後に先日のエリザベス女王杯。
残念ながら、重馬場のGⅠだと格相応の走りができそうなのは3歳馬だけで、結局掲示板に4頭載った。
秋天と似た構図は、3歳どうこうよりGⅠ級の古馬が今日本に少ないことを暗示している。
時計の壁
土曜の京都2歳未勝利で、考えられない時計が叩き出された。
「1:32.3」
2着馬は前2歳レコードホルダー・ウオッカの持っていた1:33.1で駆け抜け、以下も千切れながらGⅠ級の時計で走破してみせた。
雨対策の影響だろうが、あまりにも驚異的な数字。ウオッカもグラスワンダーも、天国のマルゼンスキーまでびっくり仰天であろう。
京都の内回りは、ローカルと似た作り。旧中京や小倉と大差はない。でも、これはちょっと罪な速さだ。
秋の天皇賞は、時計の壁との戦いである。
ミスターシービーに始まり、サクラユタカオー・ヤエノムテキ・スペシャルウィークと、テスコボーイとニジンスキーの血を持つ馬が歴史を刻んだ。
彼らは、1:58.0が限界点であることを示し、21世紀に継承した。
時を経て、ウオッカがスペシャルウィークの壁を突破すると、その3年後、トーセンジョーダンが1:56.1の世界レコード級のタイムで走破し、日本競馬の金字塔を打ち立てた。
ウオッカが参戦して以来、良馬場の勝ち時計は1分57秒前半を推移し、このレースは進化を遂げた。
でも、1番人気がよく負ける。魔物との戦いは続く。今も変わらない。
ダービーが高速化して久しいが、意外な結果が残っている。
良でも重でも1、2番人気が勝つ。
渋馬場で制した馬は、
メイショウサムソン
ロジユニヴァース
オルフェーヴル
15年間で例外はエイシンフラッシュのみ。牝馬のウオッカも3番人気だった。
ダービーの権威は揺るがない。
世界的なトレンドである、快時計乱発の流れ。
ダートがスピード競馬の中心であるという認識も、そろそろ考え改めなければならないのだろう。
血の先入観
GⅠの谷間で、適性という謎に迷い込んだ。
アスカクリチャンがアルゼンチン共和国杯を快勝。母父はダイナレター。七夕賞を勝ったアフリートの孫。
母父はナリタハヤブサ。七夕賞を勝ったアフリートの仔、という不思議な前例もある。
ダートを使われ続け初芝で2勝目を挙げて以降、船橋に転出するまで芝で走ったドモナラズと比べ、芝のみ一貫して使われきたアスカクリチャンは似たような成長曲線でも背景が異なる。
荒れ馬場は合うが、不良馬場では勝っていないのは同じ。
ダート向きの方が芝で走る。データ上は否定される仮説。ただ、アスカクリチャンがもしダートに参戦しても、きっとGⅠには届かない。
兼用馬は芝も速く走れる。難しい。
西では、芝の重賞馬・ブライトラインがダート重賞初制覇。
カネヒキリが現れてから、距離の壁と同時に芝・ダートの垣根が取り払われたフジキセキ産駒。
総じて、芝のGⅠでは詰めが甘く、ダート向きの馬は本当はもっといるはずだ。
このくらいの時計が合うという欧州鈍重血統のダート参戦組もいるが、そういうタイプは重賞で馬脚を現す。
ブライトラインはその複合体で、能力バランスがダートのこのくらいの時計にフィットしているのだろう。
オープン級にまで育つ馬は、能力バランスのいずれかが突出しているもの。
だから、芝が得意というよりダートが苦手、またその逆というようなやや曖昧な性質で、それでも能力が高いからそれぞれ血統のイメージとは異なる結果が出たのだと思う。
一風変わった個性は能力の裏付け。
まあ、これでも一側面を少し覗いただけの事。
競走馬は、難解な血統のパズル。故に、特殊な解も存在する。
2歳馬選定 10月
大切な2勝目を懸けた戦いが本格的に始まった。まずは、オープンから。
いちょうS
牡馬に強い馬が少ないという点も、現状認めざるを得ないわけだが、このレースはイスラボニータが混戦を制したことに意味がある。
骨っぽい相手を府中の1800で負かした価値は大いに評価できる。まあ、お陰でハープスターの能力が世代随一であることも判明した訳だが…。
デイリー杯2歳S
今月唯一GⅠに直結する結果が出たレース。
ホウライアキコは、少なくとも中央場所で格負けするような非力な平坦巧者でないことを証明してみせた。
2歳レコードにコンマ1差。2000以下の牝馬限定戦なら、大崩れはないだろう。
萩S
これが案外だった。
馬場回復後の稍重での競馬なので、言い訳は利かず。
キャリアホースに屈伏させられた人気各馬は、ちょっと非力さが目立ってしまった。勝ち馬は良血も、裏路線向きの渋みがある。
あとの500万以上のレースは、パッとしなかった。
稍重という厳しい条件のもと行われたサフラン賞の勝ち馬フォーエバーモアが、オープン級のメンバー相手に快勝していたので一応注目。
負けた組もそれそろ使ってくるだろうから、マークは必要か。
今月の有力新馬勝ち馬は、
10/6 トレクァルティスタ
10/13ダイワソフィー
10/20トーセンスターダム
10/26ゲットアテープ
ゲットアテープはブラックシェルの下で、タフな馬場の中距離戦が向くはず。
未勝利組では時系列順に、
クインズハリジャン
トゥザワールド
イントロダクション
ダイワレジェンド
トゥザワールドは、中距離オープンで即通用だろう。
人気と結果がリンクした馬は、将来性あり。