2歳馬 夏総括②
札幌2歳S
極悪馬場とはまさにこのこと。
牝馬のワンツーは季節柄驚くことでもなかったが、小さな体の牝馬が見た目も素晴らしい牡馬を相手に、リズムを崩すことなく走り切った点は称賛に値する。
血統の道悪適性もあるが、2着したマイネグレヴィスと最終のとんでもない展開の競馬を制したキングズクエストは同じフロリースカップを牝祖に持つサンマリノ系の出身で、この札幌2歳Sはほとんど在来牝系の継承者が上位独占。
土着血統の底力を目の当たりにし、改めて優秀な血統の定義というものを考えさせられた。
波乱の結果ではなかったのも素晴らしい。平坦適性と持久力を測るレースであった。
すずらん賞
重でも、本質は前日と変わらぬ荒れ馬場。レースは、ダート2戦も人気になったフクノドリームのワンサイドゲーム。ダート血統でタフな条件は得意だろうが、ダートでもこんな時計の掛かる条件はないだろうし、適性が違ったようだ。
小倉2歳S
ドタドタ馬場の中、雨が弱まったとはいえ1:08.8で新馬以上の走りを見せたホウライアキコのポテンシャルは想像以上だった。
直線、ベルカントの通っていた「ライン」から伸ばした末脚は、スプリンターのものではなく、マイル以上でも期待したい。
注目馬メモ
ベルカント
騎手の腕でなんとか粘り込ませた感じもあり、まだこの馬場はこなしきれなかった。重賞級のスプリンター。早熟ではない。
バウンスシャッセ
最下位だったが、牝馬でこの時期に500kg超の体では、この馬場はこなせない。参考外とみたい。
土曜新潟の新馬1、2着馬のミュゼリトルガール、マイネルグリプスは結構楽しめそうな素材だと思う。
上がり馬のおじさん
流石にGⅠで何度も好走していたカンパニーは、このテーマにはそぐわない。
天皇賞
レッツゴーターキン
オフサイドトラップ
トーセンジョーダン
JC
レガシーワールド
マーベラスクラウン
スクリーンヒーロー
連勝ストップ
マーベラスサンデー
ダークシャドウ
オグリキャップ
ヒシアマゾン
も仲間ではあるが…。
秋の重賞を2度も連勝して大一番に挑んだことへの敬意は示しておきたい。
そういえば、芦毛の有力馬ばかりのレースがあった。
メジロマックイーン・ホワイトストーン・プレクラスニー…。
1強のはずが、不良馬場のせいで予想とは違う展開に。
魔の2コーナーを乗り越えられなかった名馬の一頭。
武豊にスーパークリークショック以上のダメージを与えた、6馬身差圧勝の幻。繰り上がったプレクラスニーとは丁度1秒の差がついていた。
それでも、2:02.9というマックの走破時計は、前年のレコードより5秒近く遅い。普通の馬場ではなかった。
いまや父クリスタルパレスの名はタニノギムレットの母父という印象以上のものはない。
府中の競馬で無類の強さを誇ったプレクラスニー。準OP、エプソムカップを快勝後、混戦ムードの毎日王冠に挑み、サクラユタカオーのレコードにコンマ1差に迫る快走を見せ、本番では逃げて2位入線を果たした。
大多数がその勝利を認めない風潮の中、武豊とマックの悲劇だけ語られるのが歴史のちょっと卑怯なところ。
彼が笑い草として名を残すことになるならば、こんなに悲しいことはない。
4連勝で天皇賞馬になったプレクラスニーは、次戦でまた高速レースとなったレコード決着の有馬記念を4着後、脚部不安で引退した。
レコードクロニクル 『1:33.1』
『1:33.1』
2006年12月2日 阪神1600<2歳レコード>
顕彰馬にも選出された名牝は、すでにシーザスターズの仔を2頭生み落とし、名血シラオキの血を後世に繋ぐ役目を果たしている。
このタイムは、一応基準タイムとして今も残る。
新潟2000のレコードもそうだが、こんな時計を他馬が叩き出せるはとても思えない。
戦前、アストンマーチャンとの評価の差は歴然だった。
1:20.3でファンタジーSを圧勝し、2歳女王最有力評価の断トツ人気馬と、時計不足も未知の魅力を買われ4番人気に推された単穴候補。
更に、アストンマーチャンの主戦は武豊。
因縁浅からぬ関係の始まり。
四位洋文、激動の2年が始まる瞬間でもあった。
この後安藤勝己も交え、三つ巴の決戦を何度となく目の当たりにすることになる。
ルミナスハーバーの作った淀みないペースに、マーチャンはなんとか折り合いをつけながら追走し、ウオッカは内で脚を溜めた。
早め先頭からの押し切りを図るマーチャンを、最後外に持ち出され追われるごとに伸びる末脚で豪快に捉えたところがゴール。
脚勢の差は歴然。適性の違いも感じ取れた。
角居調教師にとっても、その地位確立に最も貢献した名馬である。
急坂に長い直線という要素が加わり懸念もあったが、今ケチをつける者はいない。
姫たちの才能が、おじさんたちの運命も動かした。
同タイムでゴールした2頭は、グレイソヴリンとレイズアネイティヴの快速血統を持つ。
血の組み合わせによって、まるで違う個性を武器に牡馬に挑んでいった。
だが、この優秀な血の一方はもう血統表に載ることはない。物悲しいプロットである。
2歳馬 夏総括①
新潟2歳S
毎年おなじみの豪脚一閃だったが、今までのものとはインパクトが違う。
レースこそ違うが、後に晩成型の才能が開花することとなるカンパニーが、休み明けをものともせず圧勝した関屋記念を思い出した。
彼は、その年天皇賞で豪華メンバーが集結する中3着と好走し、2年後にはウオッカを返り討ちして天皇賞馬となった。
ハープスターの成長力は、今のパフォーマンスだけみてもそのレベルにあるわけだ。
血統の印象通りといったところか。
奇しくも、父・母父ともジャパンカップを制している。
1400楽勝の新馬戦の走りに余力を感じさせていたが、次の1F先にあったのは独走の重賞制覇。
まさに快勝であった。
このレースの初代勝ち馬は、後にエリザベス女王杯を制するビクトリアクラウン。
祖母のオーハヤブサはオークス馬。
よく似ている2頭だが、ビクトリアが3番人気だったのに対し、ハープスターは1番人気。
時代もレース設定もまるで違うが、血のドラマの起点となる若駒時代の共通項を見る限り、未来はもう約束されたようなものだ。
人気の差し馬の不発が話題になっていたレースだが、府中・阪神の新馬戦増設で流れは変わっている。
7月にはもう強い馬が出てくるようになった。
レース傾向に影響することは必至だ。
その他、勝ち上がった馬では、
ホープタウン
28日 小1200未勝利
サトノアラジン
10日 新1600
プライマリーコード
11日 函1800
ウインフルブルーム
18日 小1800
レヴアップスピン
24日 新1600未勝利 稍
ピクニックソング
25日 小1200未勝利 不
等に注目。
週末出走予定の有力馬は、せっかくなので来週まとめて。
砂の上がり馬
ダート界では、若駒の成長期と重なる季節が夏である。
ゴールドアリュール サンデーサイレンス
サクセスブロッケン シンボリクリスエス
ジャパンダートダービーを圧倒的な走力で制し、芝との決別をするのも夏。
エスポワールシチー ゴールドアリュール
トランセンド ワイルドラッシュ
ミラクルレジェンド フジキセキ
ホッコータルマエ キングカメハメハ
夏に力をつけたダート中距離型のチャンピオン候補は、才能の片鱗を見せ始める。
今年ならインカンテーションなんかにも期待したいところだ。
ただ、アロンダイト以上の上がり馬は思い浮かばない。贔屓のしすぎだろうか。
芝に見切りをつけ、ダート2戦目の東京2100を重馬場とは言え、後続に8馬身差をつけ圧勝。
父はエルコンドルパサー。芝でもダートでも渋った馬場では特別強かった。
天に召されて4年目となる夏。芝路線ではソングオブウインドが、同じく裏路線から力を蓄え秋に備えていた。
デビュー当初から、変わらず540kgを超える迫力ボディーを武器に、真夏の京都・新潟でも勝ち鞍を連ね、また東京2100の準オープンを勝つ頃には、もうその能力を疑う者はいなかった。
そして、大一番。シーキングザダイヤ断然支持を嘲笑うかのようなイン強襲。
前走比プラス8の馬体重546kgはデビュー時と同じ。
成長とそれに伴い勝ち得てきた自信。
天才ダート馬の登場に、皆驚愕するのであった。
しかし…。
怪我をしてしまった。
2度休んだ。
体が絞れなくなっていた。
勝てなかった…。
5連勝して、それ以外は全く勝てなかった馬。
ある意味、日本のダート馬の中で、最も異質な才能の持ち主だったのかもしれない。