社台血統の開発
サンデーサイレンス牝馬と配合できる非ヘイルトゥリーズン系種牡馬が欲しい。
もしそれが見つかれば、日本競馬全体が革命となり、良血馬の輸出という野望も夢ではなくなる。
SS直系の発展は順調だが、牝系に入ると相手となる種牡馬の質が今ひとつで、あまりパッとしない。
優秀な牝系出身の繁殖牝馬が少なく、真の良血と呼べるようなサラブレッドを作り出せなかった20世紀。
輸入計画を粘り強く敢行し、日本馬の血統も世界最高水準になったが、いい種牡馬というのは簡単には見つからないし作れない。
「宿願」
それを叶えてくれそうな馬はいるのか?
配合相手として期待されているのがエンパイアメーカー(ファピアノ系)で、日本軽種馬協会静内種馬場<略:静内>に繋養されている。
ダンスパートナーの仔は活躍したが、まだ安定して良駒を送り出せていない。
ミスプロ系種牡馬は、内国産もいい馬が多くて徐々に代重ねも進んでいるから、非ミスプロ系のレイズアネイティヴ系の方がいいのだろうが、あまり輸入はされていない。
一応、超大物のワークフォース(キングマンボ系)は社台にいるが。
ナスルーラ系は、ワンペースでダート向きのボールドルーラー系以外がよい。
でも、社台期待のチチカステナンゴ(フォルティノ系)は早世してしまい、バゴ(ブラッシンググルーム系)<静内>くらいしか、本物を出せそうな馬はいない。
まあ、ボールドルーラーは最近頑張っているから、パイロ<ダーレージャパン>なんかも候補だが…。
マイナス材料と未知数との兼ね合い。
キングカメハメハとはあまりマッチしないようだし、輸入の一手に限られる現状がもどかしい。
3歳の上がり馬
ダービーで惜敗したシラオキを5代母に持つ、フロリースカップの末裔・マチカネフクキタル。
サイレンススズカの次点選出でも、出られるものなら出たいのがダービー。
サニーブライアンの7着だった。
その後、福島で自己条件を勝つとこの馬の快進撃が始まった。
神戸新聞杯で、サイレンススズカへリベンジを果たすと、もう同期に止める者は現れず、返す刀で京都新聞杯も快勝。
菊花賞では、上がり馬にまでやられるわけには、というブライト、ジャスティスの末を封じ、ダンスインザダークばりの33.9の上がりでラストクラウンを戴冠。見事に返り討ちを果たすのであった。
悲喜こもごも、97クラシックのクライマックスシーン。
しかし、全員GⅠの箔がついた1年後の有馬記念でこの追い込み三銃士は再戦を果たすのだが、既にターフは一つ年下のスターたちに占拠されていた。
刹那の輝き。猛者の集う時代のサイドストーリー…。
もう16年も前の話である。
タイキシャトルやシーキングザパールが「短距離革命」を起こした世代の菊花賞は、ドーベルv.s.マーチの二冠奪取マッチと違い、三冠挑戦断念の無念さ漂う切ない一戦だった。
ダービーを逃げ切ったサニーブライアンが、敗戦の恐怖からも逃げ切ってしまった秋の物語でもある。
アサクサスケール
オウケンブルースリ
スターマン
ティコティコタック
ヒシミラクル
メジロマックイーン
場違いの感があったから外したが、サンデーサイレンス産駒のマンハッタンカフェもそう。
名上がり馬は、案外良血。彼らの一族からはGⅠ馬が何頭も出ている。
この話も例外に漏れず。雑草の下剋上ではない。
当然の結果なのだ。
社台血統の憂鬱
サンデーサイレンス系の発展の裏で、地味ながらいい仕事をする種牡馬を最近見つからない。
一方、牧場の基礎牝系は世界レベル。
こちらは、輸入繁殖に頼る必要もない。
スカーレットインク、ファンシミン、フォルカー、クイックランチ、ベリアーニ…。
21世紀にGⅠ馬を生みだしたそれぞれの牝系は、サンデーサイレンスの陰に隠れて目立ってはいなかったが、その直仔が表舞台から去ると、GⅠでもその底力を大いに誇示してきた。
時代の変わり目に現れたウオッカも、牝系の優秀さに能力の根拠がある。
社台が盤石なのは、サンデー系種牡馬とこの優秀な牝系を自由自在に取り合わせられるからだ。
その上、サンデー系以外からそれぞれGⅠ馬が出ている。まあ、サンデーの血が入っていないのはフォルカー系のカレンチャンくらいなものだが。
問題は、牝系に代重ねされた種牡馬。中身を覗いてみると、ガーサント、モデルフール、エルセンタウロ、ディクタス…。
ノーザンテースト、トニービンなど大駒を数多く生み出した大種牡馬もいるが、結局牝系に入ることで良さが出る者ばかり。
それが折り重なれば、ボトムラインは無限の拡張を見せる反面、直系は牝駒の活躍に隠れて伸び悩み、いずれ滅びゆく運命を辿る…。
日本の競馬は、多頭数で高速馬場だから競争が厳しすぎて、繁殖能力に多少なりとも悪影響が及んでいる。
直系に弱さがあり、戦績がどうしても不安定になりやい血の導入も消極的になり、安定を求めすぎたせいで負のスパイラルに陥った。
血の一極化を打破することの責任とサンデー一辺倒のジレンマ。
必要とされるものは、主流から傍流へと変化している。
速くない強さを
夏も高速レースの連続。
七夕賞は1:58.9で決着。夏の名物重賞も新時代へと突入した。
小倉記念に至っては、GⅠ前哨戦の要素も兼備する注目レースへと変貌。
この二つの重賞は、今年レースレコードで決まっている。
函館記念も歴代3位タイの好時計に。洋芝で時に良馬場なのに2分5秒台の決着もあった21世紀のレース観が、80年代の日本一速かった時代へ一気にタイプスリップしてしまった。
無論、GⅠのほとんどのレースは歴代10位以内の時計で決着している。
時計の速さの根源が馬場の作りにあるならば、管理技術の向上をもっと賞賛すべきであろうが、10年程続いたその栄光も過渡期を迎え、違いへの欲求をもたらす主因となってきた。
中央場所と比べれば、流石にローカルの馬場の質は幾分か軟弱。
それでも時計が出るのだから、速い馬場でなくても速く走れる馬が増えたと言える。
ただ、そんな特殊な馬場状態にもかかわらず、適性を見定めずに使い続けることへの疑問がないわけではない。
繁殖能力への影響を不安視する一方、馬主が大損するような遠征計画は無謀すぎて強行しても破綻は確実。結局、外へ出るという選択肢はない。
一方で、ドイツ血統が大レースを制することも増えている。
JCだと流れが速すぎて見せ場を作れていないが、欧州2400路線では見逃せない存在に。
その上、この血筋が走る時は決まって高速決着。
世界的な高速化偏重の流れは、重い馬の時代を予兆しているのだろうと思うのだが。
重い馬をもっと作ろう!
日本に、クロスを生む祖先はほとんどいない。
明るい未来のために、一見遅そうに映る馬も必要ではないだろうか。
サマーシリーズ 暫定ポイント
夏競馬も半分を消化。
ただ、夏の新名物はこれからが本格的な勝負となる。
・スプリント
ハクサンムーン 15
パドトロワ 11
マジンプロスパー 10
現状、キーンランドカップに有力馬が何頭出るかで勝負は決しそう。
今年は、順調ならハクサンムーンがあと1回は出てくるだろうから、ほぼ流れは決まっている。
北九州記念とセントウルSに出走した馬が有力候補になる。
・2000
トウケイヘイロー 10
マイネルラクリマ 10
今週末の小倉記念にかなりの数、七夕賞組が参戦予定。
札幌記念<1着:12ポイント>のある北の路線もあるが、今週末にマイネルラクリマが好走すれば、チャンピオンへ一気に近づくだろう。
・マイル
(フラガラッハ)10
去年は、案の定というか3戦すべてで別の馬が勝ち、また複数マイル重賞に参戦した馬は対象レースを勝てなかったので、結局初代チャンピオンは現れず。
2勝するのは至難の業。
2回出て初めて先が見える路線。今年も混沌としている。
・ジョッキー
戸崎圭太 26
内田博幸 25
岩田康誠 23
武豊 21
酒井学 19
真の意味での夏のサバイバルは、このタイトルだろう。
結局は春のGⅠで活躍した人ばかりが目立っているが、ベテランでかつ、すでに夏の重賞を勝っている四位、横山典騎手の秋に向けたしたたかなアピールも見逃せない。
特に、異彩を放つのがノリ騎手。
全10場重賞制覇への執念か。それとも、夏の北海道開催の削減に対するプロパガンダもあるのか。
美しすぎるベテラン騎手の妙技を、夏の関東ローカルで見られるのはファンもうれしいはず。
ただ、何か騎手生活の終末を臨んでいるのか?とも思えるのだが。