親子秋物語
ダンスインザダーク-ザッツザプレンティ
天皇賞の親子戴冠は数多く知られるが、菊花賞でもグレード制導入後3度の親子制覇が達成され、そのうち2度ダンスインザダークの産駒が血の継承を体現した。
この親子、社台の名血で兄弟・一族に国内外のレースでの活躍馬多数というバックボーンを持ちながら、3歳春までは煮え切らないレースに終始した共通点がある。
父 キレ味を武器にあと一歩…。
仔 渋った馬場にニンマリも…。
弥生賞を勝った、負けたで差が出た分、仔は人気に推される事はなかったが、ダービーではともに好走。
秋緒戦は2200と2000の差以上に、能力の差があった。
しかし、3000の菊の舞台で全力疾走。
刺激的な魅惑の末脚。
三冠封じの超正攻法。
劇的シーンの系譜。ただ父仔とも、これが最後の輝きとなった。
エアデジャヴー-エアメサイア
この母仔にとって差す形が、奇策であったか否かが運命を分けた。
好位差しの形で前哨戦まで戦っていたノーザンテースト産駒のデジャヴーは、クラシック本戦では末脚勝負に懸けたのだが…。
ファレノプシスは強かった。
オークスは先着こそ果たしたが、ファレノプシスを負かすことに主眼を置いた戦いで、エリモエクセルには及ばず。
同じ血を持つライバルと戦った娘。
適性ではこちらに分があった。
オークスで母娘の血の縛りがジレンマを生んだ。母は秋緒戦を制し本番では1番人気も、正攻法で敗れた。
勝たねば。
見事に、ラインクラフトを返り討ちにした娘。
そして、いいとこ獲りの武豊。
母は、GⅠを勝つために必要な武器が足らなかった。
秋のせいか、こんな話をしていると、つい感傷的になってしまう。
裏秋競馬
欧州の誇りを粉砕する戦い。迎え撃つ非遠征組の選定。引退の花道は香港か否か。
しかし、馬肥ゆる秋。他路線の見どころを探る。
牝馬路線は、近年にない様相。
産経大阪杯完敗のヴィルシーナが直後のヴィクトリアマイルを制したが、凡走続きのホエールキャプチャに苦しめられていたので何とも言えない。
安田記念も小差の8着だったから最有力に違いはないが、初の春秋統一への期待は、過剰なほどに昨年の二の舞が危惧される。
アイムユアーズやマルセリーナが夏に復活を遂げたが、主力級ではなく、3歳路線の平定を目指すデニムアンドルビーも、大分荒削り。
今年のエリザベス女王杯は、実に難解。穴狙いの準備は抜かりなくいきたい。
同じ牝馬ならば、2歳勢は熱い。
ハープスター、レッドリヴェールというチャンピオンディスタンスで結果を出した馬はもちろんだが、クリスマスやホウライアキコの方が、言わずもがなスピードでは勝るわけで、神経の図太さがモノをいうオークス以外は、いくらでも対応できそうな才能を秘めている。
みんなジュベナイルフィリーズに出てくるかも気になるが、朝日杯なんかに出て来ても、いや、もしかしたらラジオNIKKEI杯も?
まだ期待馬がデビュー前の路線。熱が冷めることはないので、じっくり成長を見届けたい。
あと、ダート路線は古馬再チャレンジ組が相次いで敗退。
それでも古馬有利だが、ここは3歳レパードS組に期待。
勝ち馬は中山で見せ場を作れなかったが、サトノプリンシパル、ケイアイレオーネがシリウスSに登場するので、ひとまず応援したい。
クリソライトだけでは切ない。
国際グレードの競馬は、ここにもある。
秋華賞展望
スマートレイアーがメシア様に見えてきた…。
風雲急を告ぐ、特別登録一週前である。
GⅠ馬2頭に、前哨戦で図らずも驚異的な追い込みを決めたデニムアンドルビーは有力。
それでも波乱を期待したくなるのが京都2000というもの。
ただし、春の結果が想像よりかはずっと狂ったからといって、08年のような破綻に近い展開になるとは限らない。
紅梅SやフローラSでは、馬場が渋ったことでその距離以上に向く適性を測ることになったが、お陰で、距離が延びたレースで紅梅S勝ちのレッドオーヴァルを除くと、みんな次のレースも好走している。
プラスアルファは道悪。
よって、実力に比例した形でローズSは決着したのだ。
また、ウリウリは母父フレンチデピュティ、ウインプリメーラはオルフェと同じステイゴールドの産駒。
好走馬は、これで本番の上位入線は約束されたようなもの。
ほとんどの馬は、2000M以上を経験している。
でも、また道悪になるとちょっと面倒なような気も。
デニムアンドルビーやメイショウマンボは差しタイプだから、重馬場では仕掛けのタイミングが一気に難しくなる。
雨ならノボリディアーナ。
<一叩き一変への期待>
良なら、ローブティサージュ。
<岩田騎手と2000Mチャンピオンの父、母父で適性◎>
3番人気以内ではないだろうし、人気馬やそれ以上に人気のないグループとの組み合わせに趣向を凝らしたいレースである。
もし、ユタカだったら…。
鞍上にとっては、この時季にあまりにも因縁深い配合の馬とのコンビでの参戦となる確率が高い。
「大一番」翌週の3歳牝馬最終決戦。
どの道、気持ちの切り替えが大切な一戦である。
新馬回顧 9/17・21・21
火曜
中山ではマイネルアウラートが逃げ切り。
ポツポツ活躍馬を出すロイヤルレジナの系統で、いきなりのオープンでも通用しそう。
一方、阪神はジュエルオブナイルの半弟オースミチャドが人気に応え、見事デビュー戦を飾った。
2000以下であれば安定して走りそう。
両者とも渋馬場は合う。
土曜
阪神1200
1、2着馬の反応の良さが際立っていた。
好調・ヨハネスブルグ産駒で、スペシャルウィークと根幹血統が居並ぶ母の血筋のタガノブルグは、レース内容通り、距離延長はむしろ歓迎。
ダ1800
サンデー・ミスプロ・リアルシャダイの3つが入った血統という共通点を持つ人気馬同士の決着。
勝ち馬は500kg近くまで体重が増えれば、重賞も狙える器になるか。
中山は千二の牝馬戦。
波乱含みとはいえ、この時期の稽古内容や馬体の印象頼りすぎると…。
勝ったエクスシアの母は、活躍馬ハネダテンシ。アマゾンウォリアー系で、本格化は古馬になってからか。
日曜
阪神は注目の1600戦。
良血馬が顔を揃えた一戦だったが、ヴィンテージローズが兄弟と轡を並べるが如き438kgの馬体で、タフなマイルコースでの初陣を飾った。母はロゼカラー。
ロブロイ牝駒で適性は判然としないが、次戦はもう少し人気なるだろうし、決め手がどの程度かもう一度確かめたい。
中山もマイル戦。終始有利な態勢のまま押し切ったグリサージュの走りは、クロフネ×バブルの配合イメージ通り。
西同様、次はどこまでやれるかがミソだが、鞍上込みで曲者の予感。
長い一週間の掉尾を飾ったタカミツダンサーは、相手関係は楽でも、好素材だろう。短距離路線の牽引者に大成してほしい。
騎手批評(前編)
<クリストフ>スミヨン
<岩田>ヤス誠
<武>ユタカ
JCの内容は強烈で印象的。また象徴的だった点も同じか。
ユタカは、強かで断然人気で負けてもしらっとしてる。腹の立つほどに。
彼より年下とはいえ、まだ若い2人はよくへこむ…。
人間性という意味では、後者の方が同情できる。
その二人、ショーマンシップに走り過ぎる悪癖を持つ。
好きと嫌いが二分するエンターティナータイプ。あまりやりすぎると、やはりいい気はしない。
その分、先輩ユタカには英語の「smart」という表現がしっくりくる。
加えて、大一番直前の高圧的な言動も目立つが、負けると寂しそうにしている…。
どうなんだか。
速く走らせることに対する強みと、大博打に挑むことの少なさ。
勝負に妥協をすることはないが、ユタカに欠如するのがリスクへの挑戦だ。
時は、凱旋門賞直前。
ホワイトマズル、ディープインパクト…。
スミヨンの大胆な騎乗とは、一線を画す。
凱旋門賞を勝っている者と勝っていない者と乗ったことのいない者。
それを経験していないヤスは、ダートが巧い。
どうせならアメリカ遠征でもしたらどうだ。
園田と中央とアメリカのダートの質の違いを感じるだけで、乗り方に変化が出るはず。
今ひとつ、全体像を捉える力が不足している。
昨年、珍・凱旋門賞となった要因は、スミヨンの日本馬に対する認識の甘さ。
ヨーロッパの馬は、日本馬ほどはキレない。色々な意味で。
だから、今のオルフェーヴルを駆るに相応しい人間はこの中にはいない。
何せ、もう彼は人間に心を開くことはないのだから…。
うまく乗ることを諦める大英断こそが、彼を世界一にする唯一の秘策だ。