短距離路線回顧
この路線は重賞が二つ残っているが、マイルチャンピオンシップで一段落。これからは、来年に向けたレースが始まる。
まあ、ゴッド・ロードカナロアが年末の香港にでラストランを迎えるので完全に終わりというわけではないのだが、それはあくまでもエキシビジョンマッチ。挑戦で終わる王者の戦い方は、実に意義深い。
ダノンシャークが初重賞制覇を果たし、年末にはサンカルロが阪神カップ連覇。
ここ数年の傾向に倣い、一定以上の経験を積んだ古馬が充実期にあることを示した。
しかし、放し飼い状態だったゴッドの復帰後は、新興勢力がことごとくおもちゃにされてしまった。
トウケイヘイローやダイワマッジョーレが出現するも、大勢は変わらず。
夏は夏で盛り上がった。
先行タイプのハクサンムーンとフォーエバーマークがスプリンターズSまで出て来てレースを盛り上げた。
パドトロワの復活、ツルマルレオンの激走とリタイアなど事件なサマーシリーズだったが、最終戦でロードカナロア敗れる、というセンセーショナルな一場面を演出したハクサンムーンの快走に、ファンは胸のすくような思いを共感した。
一強でも役者の多かったスプリント戦線とは対照的に、マイルの特にGⅠ2戦は他流試合といった趣に。
ロードカナロアとトーセンラー。
ショウナンマイティとダークシャドウ。
そして、ダノンシャーク。彼が脇役では、マイラーに出番なしも頷ける。
トーセンラーがチャンピオンになった理由は二つ。
本質的に向いていた。
ライバルの上昇力がGⅠに挑むにはあと一歩足らなかった。
全てうまくいったのも確かだが、必然の流れにも思えてしまう。来年こそは…。
新馬回顧 11/16・17
土曜
東京の牝馬戦は2番人気のカノーロ、断然人気のスウィートレイラニともに直線外を選択するも、伸びてきたのはカノーロ。
祖母エアグル-ヴ。416kgでは流石に小さすぎる。成長を待ちたい。
エイシンブルズアイの楽勝だった京都1600戦では、祖母エアグル-ヴは凡走。
勝ち馬はダート血統だが、今は芝で勝負したい。注目馬。
東西でダート戦も行われた。
東は、ブラックタイド産駒・ブラックジャガーがデビューウイン。
西は、断トツ人気のトーセンクラウドが圧勝の流れから失速。3頭横一線のゴールはヴェルメンティーノに軍配。
トーセンクラウドの敗因探しは難しい。
日曜
東京1800はダイヤの原石が登場。好時計で完勝のビップレボルシオンは、マンハッタンカフェ産駒らしく奥行きを感じさせる素晴らしい競馬だった。
伯母はメジロドーベル。厩舎の先輩トウケイヘイロー超えが当面の目標。
1400では、バクシンオー産駒らしい圧倒的な逃げ脚でダンスアミーガが楽勝。ダンスパートナーの一族でこの手の快速型は少ないから、しばらく追いかけてみたい。
京都1800
スリーカラーナンゴが定石通りのスローの逃げ切り。3代母がウイニングカラーズというチチカステナンゴ産駒。
3頭のディープ産駒は、正直スケール感に乏しい印象。
アグネスミニッツは豪快に追い込み3着。母父タキオンでスティルインラブの一族だから、これは秘策にとっておきたい。
ダートの1800は順当。カメハメハ×グレイスティアラという良血ダノンバトゥーラの快勝。間違いなく走る。
福島ダートはブライアンズタイム産駒のタガノコルコバードが快勝。
ダート組も見逃せない。
ジャスタウェイの謎
「普通は走らない配合」
ジャスタウェイは、イレギュラーな才能である。
競走馬としては、決していい配合ではない。
フィリーズサイヤーとしてなら成功を収めるかもしれない。
そんなこと言うと鬼に笑われるか。
具体的に見てみると、父ハーツクライにはトニービンとリファールが入っている。
ダイレクトに各々をとり合わせると、何をしでかすかわからないことは想定されてたはず。だから、普通のサンデー産駒より個性が強い。
一世一代の大駆けとなった2度目の有馬記念では、今までとは違う戦法で後続を封じたのだから、本当に不思議。
ディープ親仔に屈辱を味わわせたハーツクライ親仔。
それぞれリファールの血を共通して持っているが、特徴である重厚さをディープは底力に転換し、ハーツクライはそれを活用しきれず不器用さの源となった。
ジャスタウェイの牝系には、トニービンと相性のいいハイぺリオンの血が5代以内に5本。
トニービンの後継種牡馬ジャングルポケットも、同じ括りで9本入っている。
でも、インブリードの影響は小さく、この馬の基本能力はハーツクライによるところが大きい。
だから、欧州型の一流種牡馬を母シビルに配してからハーツクライをつけたらクラシック本番でも…。
もちろん、変にまとまりすぎて底力が半減するリスクも伴うが。
姉はバクシンオー産駒のスカイノダン。南半球のスピードタイプの種牡馬とは相性良好か。
弱点を補完する配合ではないのに、天皇賞圧勝。この結末はとても読み切れない。
あまり日本になじみのない血統が多く、色々なタイプの繁殖牝馬と配合してほしいが、ベストパートナーはどこにいることやら。
秋GⅠ前半回顧
順当に収まった最初の3戦。
人気上位馬が勝ったというよりかは、一番強い馬がきっちり結果を出した感じ。
「こうあってほしい」
至極真っ当なGⅠレースらしい展開に、強い競馬だったという満足感がファン、関係者すべての共通認識。
シーズン序盤は、上々の滑り出しとなった。
3レースに共通する強いとファクター。素晴らしいのは、一番体調の整えにくい秋口のレースで、春の強さに安定感を上乗せできたこと。
エピファネイアは、世代のトップホースだから連勝も当然なのだが、その前の2レースの勝ち馬は前哨戦で敗退。
勝ち馬の強さも目立ったから不穏な空気にもなったが、押さえるところは押さえるという内容の競馬で他馬を完封した。
一方で、秋の天皇賞は1強が崩れた競馬。
勝負師の中には、エイシンフラッシュに期待を寄せる声も。
古牡馬の層が遠征・回避馬のいるせいで大分薄かったので、ジェンティルの東京適性以前に、現状のこういった力関係であまりに過剰な評価がなされているから、弱くはないが、少々推しづらかった。
結果、本命、対抗馬ともにジャスタウェイに全く歯が立たず。ジェンティルとは初対戦も、衝撃的な結末に。
ハーツクライと福永祐一。もう負けたくない、という強い意志が走りに現れていた。
が、勝ち馬JC回避を早々に表明、凱旋門賞組は暮れの大一番に照準を絞った。
チャンピオン路線は少々消化不良だ。
最後に先日のエリザベス女王杯。
残念ながら、重馬場のGⅠだと格相応の走りができそうなのは3歳馬だけで、結局掲示板に4頭載った。
秋天と似た構図は、3歳どうこうよりGⅠ級の古馬が今日本に少ないことを暗示している。
新馬回顧 11/9・10
土曜東京。ダート1300は、フォールティテールが断然人気馬を差し切る強い内容。プリサイスエンド産駒。
2000では、デルフィーノが上がり33.2の末脚で人気に応えた。父ハーツクライ、叔父ダノンバラード。
因縁深し。時計克服に課題。
曇天の京都1600戦は、小牧騎手のガッツが裏目に。落馬後最初の騎乗馬がクラレントの下。掛かり癖は承知の上で馬任せの競馬も、直線進路を失い万事休す。結果はアズマシャトルの快勝結果。上位3頭は軽く2勝できそう。
ダートは、兄グランドシチーとは真逆の先行抜け出し策でラフィネシチーが快勝。牝馬なので砂専門の判断は早計。
オーマツカゼ系の傍流。生命力の強さに名血のプライドを感じる。
日曜も東京から。
2歳馬ならお任せの田辺騎手が跨るネオ産駒、タマモネイヴィーがデビューウイン。兄弟はダート向きに出る傾向。
午後は、ショウナンワダチが1600戦を外から豪快に伸び快勝。ショウナンカンプの一番馬に名乗りを挙げた。アサマユリ系の父と同じく大器晩成型のシャダイプリマ系出身の母との配合。父、母父の印象よりずっと渋とい印象がある。
馬場悪化は稍重止まりだった京都。
1200はシャイニーガールがゴール前捉えきり勝ち上がり。ブラックタイドもちょくちょく活躍馬を出すので注意しておきたい。
2000では、人気のディープ×レンドフェリーチェという配合のダノンアンビシャスがこちらも同じように、抜け出しを図ったレッドアルゴをきっちり捉えて初陣を飾った。
福島1800も京都と同じ。逃げ馬をゴール前捉えたキタサンキンボシが新馬勝ち。渋めの血統にステイゴールド。不気味だ。