ジャパンカップ展望
ひとまず有力馬の出ていたレースを振り返るとする。
宝塚記念<ゴールドシップ>
有力3騎は皆好位をキープし、自分のタイミングで動ける位置にいた。
しかし、到底良馬場とは言い難いタフなコンディションの下で行われたこともあり、普段より大分スムーズな競馬のゴールドシップにはおあつらえ向きの展開に。
フェノーメノには天皇賞のリベンジを果たし、初対戦のジェンティルドンナには牡牝のパワーの差を見せつけ圧勝。
敗者2頭は、ともに前走との間隔がネックとなり万全の出来ではなかったと思われる。
・ポイントは、宝塚組はコネクションが強く、底力を示していればここでも好走することの多い点。
天皇賞(秋)<ジャスタウェイ>
ジェンティルドンナの現状を掴む上で重要なレース。
好発からトウケイヘイローを終始いじめ抜き、己に最も厳しい展開を作って勝ち馬に大差をつけられたが、走破タイムは似たようなコンディションでこのレースを勝ったブエナビスタと同タイム。
ローテーションも似ているから、斜行までは似ないでほしいが…。体調は春よりは良かった。
乗り替わりがどう出るか。昨年でこの作戦で勝っている。
・焦点は、クラシックを戦い抜いた差しで勝負するのか、或いは天皇賞のように好位抜け出しを狙うか。
前年覇者は一長一短、芦毛の怪物も前回が前回なので自信の推奨株ではない。
ただし、3歳勢は若干層が薄くGⅠ馬は不参戦。海外組の大駒が少ないから、その他も当たってみたが、どうもしっくりこない。
レッドカドーなど古豪に目を向けても、レース特性からして良馬場では3着が関の山。
日本の4歳2強は揺るがないように思う。
時計の壁
土曜の京都2歳未勝利で、考えられない時計が叩き出された。
「1:32.3」
2着馬は前2歳レコードホルダー・ウオッカの持っていた1:33.1で駆け抜け、以下も千切れながらGⅠ級の時計で走破してみせた。
雨対策の影響だろうが、あまりにも驚異的な数字。ウオッカもグラスワンダーも、天国のマルゼンスキーまでびっくり仰天であろう。
京都の内回りは、ローカルと似た作り。旧中京や小倉と大差はない。でも、これはちょっと罪な速さだ。
秋の天皇賞は、時計の壁との戦いである。
ミスターシービーに始まり、サクラユタカオー・ヤエノムテキ・スペシャルウィークと、テスコボーイとニジンスキーの血を持つ馬が歴史を刻んだ。
彼らは、1:58.0が限界点であることを示し、21世紀に継承した。
時を経て、ウオッカがスペシャルウィークの壁を突破すると、その3年後、トーセンジョーダンが1:56.1の世界レコード級のタイムで走破し、日本競馬の金字塔を打ち立てた。
ウオッカが参戦して以来、良馬場の勝ち時計は1分57秒前半を推移し、このレースは進化を遂げた。
でも、1番人気がよく負ける。魔物との戦いは続く。今も変わらない。
ダービーが高速化して久しいが、意外な結果が残っている。
良でも重でも1、2番人気が勝つ。
渋馬場で制した馬は、
メイショウサムソン
ロジユニヴァース
オルフェーヴル
15年間で例外はエイシンフラッシュのみ。牝馬のウオッカも3番人気だった。
ダービーの権威は揺るがない。
世界的なトレンドである、快時計乱発の流れ。
ダートがスピード競馬の中心であるという認識も、そろそろ考え改めなければならないのだろう。
血の先入観
GⅠの谷間で、適性という謎に迷い込んだ。
アスカクリチャンがアルゼンチン共和国杯を快勝。母父はダイナレター。七夕賞を勝ったアフリートの孫。
母父はナリタハヤブサ。七夕賞を勝ったアフリートの仔、という不思議な前例もある。
ダートを使われ続け初芝で2勝目を挙げて以降、船橋に転出するまで芝で走ったドモナラズと比べ、芝のみ一貫して使われきたアスカクリチャンは似たような成長曲線でも背景が異なる。
荒れ馬場は合うが、不良馬場では勝っていないのは同じ。
ダート向きの方が芝で走る。データ上は否定される仮説。ただ、アスカクリチャンがもしダートに参戦しても、きっとGⅠには届かない。
兼用馬は芝も速く走れる。難しい。
西では、芝の重賞馬・ブライトラインがダート重賞初制覇。
カネヒキリが現れてから、距離の壁と同時に芝・ダートの垣根が取り払われたフジキセキ産駒。
総じて、芝のGⅠでは詰めが甘く、ダート向きの馬は本当はもっといるはずだ。
このくらいの時計が合うという欧州鈍重血統のダート参戦組もいるが、そういうタイプは重賞で馬脚を現す。
ブライトラインはその複合体で、能力バランスがダートのこのくらいの時計にフィットしているのだろう。
オープン級にまで育つ馬は、能力バランスのいずれかが突出しているもの。
だから、芝が得意というよりダートが苦手、またその逆というようなやや曖昧な性質で、それでも能力が高いからそれぞれ血統のイメージとは異なる結果が出たのだと思う。
一風変わった個性は能力の裏付け。
まあ、これでも一側面を少し覗いただけの事。
競走馬は、難解な血統のパズル。故に、特殊な解も存在する。
新馬回顧 11/2・3
土曜 東京
1800は人気薄の台頭。シーザスターズ、ハーツクライの末脚に屈す。
勝ったストロベリーキングの4代母はワンスウェド。きっと何か特別なものを秘めているかもしれないが、全能力は不明。
1400も、エビショー×(外)がまたしても人気に応えられず、という展開に。代わって2番人気のカラダレジェンドが圧勝。フレンチデピュティ産駒。馬名の由来はドイツ語で冒険。
京都
逃げなきゃだめな芝を、リキアイワカタカ産駒の2番人気サンシカゴが逃げ切った。2着は急逝したオレハマッテルゼの仔だったが、1番人気が3着に入ったので波乱ではない。勝ち馬が強すぎた。
ダートでは、ベストルーラーが圧倒的支持に応えた。どうみても1800くらいが合いそうな血統構成だが、この先の楽しみということで。オープン級か。
福島
スプリント戦だったもののハーツクライ産駒が勝利。人気に応えたカレンブランブルーは安田隆行厩舎。成長が楽しみだ。
日曜一番手、京都の1600牝馬戦は一桁台のオッズだった2頭が消え、その分4番人気・アルトゥーナの末脚が際立っていた。
エクセラントカーヴの妹で、またハーツクライ。身が入るまでは我慢。
1800戦は混戦。結果、外国人騎手の積極策が功を奏し、早め先頭からアルティメイタムが押し切った。
ディープスカイ産駒の傾向を掴む意味でも、気になる存在。
東京ダートは、どう見ても仕上がり途上のアジアエクスプレスがモノの違いを見せつけた。ヘニーヒューズ産駒。完成形を早く見たい。
芝の方は、大混戦の入線も人気のオメガハートロックが、最後頭一つ抜け出した。人気薄のネオの仔を狙っていたのだが…。
マイルCS展望
富士Sを見て、スワンS次第だなと思っていた。
スワンSを見て、混乱してしまった。
ならば天皇賞から、何頭出てくるのか?
これでは軸馬選定さえままならない。
ただ、天皇賞組なら狙い目の馬がいた。
トウケイヘイロー
ジャスタウェイ
コディーノ
レッドスパーダ
が、この4頭は出てきそうにない。すでに、3頭が放牧に出されている。
残るトウケイヘイローも、天皇賞の次にマイルCSに挑んでくるかもしれないから、サダムパテックがスワンSで乗り替わりになったとも勘繰ったのだが、こちらもはっきりしない。
そもそも、12月以降の中距離重賞の番組は充実しているわけで、安田記念がダメでマイルCSはいいというのでは言い訳も難しい。
レッドスパーダが出てきたら狙いたかったが。
さて、ダノンシャークとショウナンマイティが今年の中心馬なのだが、奇しくもお互い前走二桁体重減。休み明けのマイティは人気を裏切り、連続体重減で連続連対したダノンも両方とも反動が気になる。
それにカレンブラックヒルは休み明け。スワンSもGⅠ実績馬の凡走で波乱では、枠や馬場状態もかなり結果に影響してきそうだ。
エクセラントカーヴやレッドオーヴァルなど、古馬オープンのキャリアが浅い牝馬への期待感はあるが、ブルーメンブラッドみたいに劇的な成長があるとも思えない。
そういう意味では、人気薄に狙いを絞るのも面白いか。
リルダヴァル
…重賞未勝利も京都3勝。
ダイワマッジョーレ
…実質初の休み明けで2着。常に上がり3F出走馬上位。
ラトルスネーク
…休み明け激走後の中一週で凡走。ナスルーラ偏重の血統構成はウオッカと同じ。
万券狙いでいきたい。