種牡馬ハーツクライ
ジャスタウェイが久々の勝利を挙げ、カレンミロティックが主戦の乗り替えた名馬の引退レースに花を添えた。
その時の、完全復活の兆しを再度見せつける格好になったウインバリアシオンの激走はつい10日ほど前の話。
彼らはみんなハーツクライ産駒。あの有馬記念を勝ったハーツクライ。
有馬記念があまり劇的だったから、この男の事も語っておきたい。
まともにやりあって勝ったという記憶はない代表産駒たち。
実力を示したレースで、周りに馬がいたという印象が全くないのだ。
まだ大きな舞台には縁のないカレンミロティックも、勝つ時はすんなり。
前記のGⅠ好走馬は、みな好時計決着で結果を残している。
1800で44秒台を2度記録しているカレンに、小倉記念レコード勝ちのメイショウナルトなんかも同じ。
どこか爆発的に強いゾーンがあるのは間違いない。
父や母父トニービンの特性が東京に偏った好走例があるといった特徴より、自分の好きな競馬の型があるといった感じ。
先行タイプは差すと持ち味が消えてしまうだろうし、ジャスタウェイが急に好位策に出ることも考えにくい。
一方で、またGⅠ好走馬やアドマイヤラクティ、またオルフェーヴルに辛くも競り勝ったギュスターヴクライなど、幾分時計の掛かるレースで結果を出すある意味では、トニービンに似た性質を示す者もいる。サンデー系の中では、かなりのステイヤー資質を秘める。
スピード型の系統が少ないとこちらの性質が優先されて伝わるようだ。
ジャスタウェイはドバイ遠征予定、ウインバリアシオンやカレンミロティックなどの明け6歳世代も今後どんな競馬を見せてくれるのだろう?
日はまた昇る
オルフェーヴル
阪神大賞典が終焉でなかったことに、人間の側が決して驕りを持ってはいけないのだと、あの圧勝劇が思い出させてくれた。
あくまでおまけの古馬戦。
三冠以上の価値は、現在の競馬界には存在しない。
阪神大賞典とは、一体何だったのか?
巷で様々な方向から分析のなされた人気馬による異様な立ち振る舞い。
曲芸を駆使して他を制することは、王者に相応しい競馬とは言えない。
過去にはこの手の荒くれ者はいた。
しかし、本物に戻らない、それこそもっと若くて勢いのあった頃と本来はこうではないのに比較されてしまうのがオチ。
1年半以上もGⅠ勝利から見放された屈辱の日々。
自己主張の仕方がレースに対する前向きさではなくなったことにより、そのまましぼんでしまうことを避けるための暴走だったのか?
阪神大賞典は、自分の古馬としての戦い方を示したのだとも今では思えてくる。
強引に使いこまれる事がなかった。
走りたい気持ちを無理に抑えこませなかった。
などの理由から、彼は己の走りを取り戻すことに成功した。
オグリやテイオーの時に見た、一瞬の幻ではないかと見紛うほどの決め手。
相対的に見て全盛期のそれではないのは明らかだったが、迫力満点の有馬記念勝利に救われた関係者は少なくない。
名馬に身を委ねることへの疑念と信頼。
信頼関係が戻ったというより、馬が人間側に歩み寄ってくれた感じか。
とにもかくにも、あの時終わらなかったことに感謝せねば。
天国のナリタブライアンが、我々にいろいろ教えてくれたことが結実した日。
どんなに時が経っても、新鮮な記憶として残る競馬。
3年後の産駒デビューの日まで、さよなら。
古馬王道路線回顧
短距離にはロードカナロアがいて、3つのタイトルを持っていった。
3歳戦線では、日本で活躍したサンデー系とロベルト系の組み合わせからチャンピオンホースが現れ、その他も2歳チャンピオンとディープ産駒が穴埋めすることで、GⅠ格の面目を保った。
ダート路線は、相変わらずタレント揃いで不変のハイレベル。
一方、凱旋門賞一本狙いだった今年のチャンピオン路線の風潮は、連続性に強さの根拠を示せるこの路線の本質の変容を示し、その存在意義も揺らいでいるという印象を残した。
年度代表馬が短距離型なのがいけないのではなく、日本馬が中距離路線で世界に伍して戦えることを示してきた結果、国内戦の空洞化を招いたのがよくない。
勝った馬は強い。でも2着馬も強かったのは、天皇賞の2頭だけ。その価値は、今も昔も変わらないということか。
天皇賞春・秋
同期なのに直接対決は2度だけ。全く違う道を歩んだ2頭は、こちらも同期のチャンピオンホースからいとも簡単にタイトルを奪取した。負かした相手は直後に得意条件で巻き返し、彼らの走りが本物であることは証明された。
宝塚記念・ジャパンカップ
その上記の大楽勝の原因を作ってしまった人気馬。
多くの支持に応えるべく、色々と乗り方を含めた馬に対するアプローチを熟考し、密着生活だったり乗り替わりであったりと策を巡らせ、結果を出した。その底力は歴代屈指のものだ。
そして、伝説の有馬記念。
帰国後の不調を嘲笑うかが如き引退レースの圧勝。やっぱりオルフェーヴル…、という結論が一番しっくりくる。
来年のヒーロー候補は、現在休養中。だから、日本馬は驚異となり得るのだ。
2歳戦総括 牡馬・ダート編
牡馬とダート馬。
そんな括りを決定づけた朝日杯の結果は、好走馬の次戦の内容が重要なので評価保留が妥当か。
従って、各馬の巻き返しも過剰評価がさえなければ、相応の結果はついてくるはずだ。
それにしても、アジアエクスプレスという馬は強烈だ。末恐ろしい。
12月の注目馬は多め。
葉牡丹賞 キングズオブザサン
5阪1 ワールドインパクト<未>
5阪2 ガリバルディ<未>
ミッキーデータ<新>
エリカ賞 バンドワゴン
4中京4 ヤマノウィザード<未>
4中京6 マイネルグリプス<未>
5阪8 サトノルパン<未>
暮れの名物ラジオNIKKEI杯は、ワンアンドオンリー駆るルメールのマジックが決まったが、先行勢の失速と人気馬の不発が不穏さを助長。
それならホープフルSの方が魅力的。またしても人気にならなかったエアアンセムが穴をあけ、関東期待の1、2番人気馬がその後に続いて実力勝負に。朝日杯と同格くらいのメンバーだったし、12月の主要3レースは序列をつけないほうがいいだろう。
朝日杯除外組のモーリスとミッキーアイルは特別快勝で浮気もしたいが、距離に限界あり。
全日本2歳優駿を勝ったハッピースプリントは、芝であわやのシーンも作ったがダートは無敗で地方チャンピオンになった。アジアエクスプレスとここでぶつからなかった点が実に興味をそそられる。
トゥザワールド、イスラボニータにトーセンスターダム…。12月は未出走だったピラミッドの上位に属するこの3頭に並べたのは、うまいこと賞金加算できたアジアエクスプレスと、2戦不敗で凄味の出てきたバンドワゴンくらいなものだろうか。
まだ何も見えてこない。
2歳戦総括 牝馬編
阪神JFは、真実のみが眼前に広がる結果となった。
休み明けは問題ではなく、現時点での底力=ポテンシャルという等式がレース傾向に沿った形で今年も踏襲されたから、負け組は今回に関しては完敗の構図。
各場2歳Sの勝ち馬が中心。アルテミスSの優勝馬も参戦し、積極策とは言えない朝日杯参戦を決めたファンタジーSの勝ち馬もいたが、それらは共通して各2歳Sの好走馬だった。
無敗馬3頭が、当たり前のように負けていない強みをフルに活かして、きりもみ状態の同タイム入線。
最近はプレクラシック的意味合いが強かったが、今年は単体のGⅠ戦としても大きな意味がありそうで、貴重な一戦とも言える。
敢えて物申すならば、これからはもっときついということ。
まだライバルは増える。それが、今回の負け組の一度負かしたはずの相手になるかもしれないから怖い。
それはフルゲートの大激戦が、ハイレベルの一戦だと誰の目にも明らかだったからだ。
一度でも大きなアクシデントが起きると、本番の人気に多大なる影響を及ぼす。
だから、まだ一つの結果が出ただけだとも言い切れるのだ。
ダイヤの原石がどこに埋まっているかわからない。楽しいと言えば楽しい。
非オープン勝ちの馬では、
・サングレアル
・リアルヴィーナス
・ワイレアワヒネ
らが面白いか。
勢力図を見ると、言わずもがなJF組が世代の中心。
ハープスターに勝てる方法を、レッドリヴェールが見つけたという印象。
それは、夏の印象から大きく変化しなかったことを意味する。
JF6着以下の組では、レーヴデトワール、グランシェリーらの成長に期待。
クラシックシーズンが実に待ち遠しい。