皐月賞展望
狙い通りに勝った馬。思惑と少し違う結果だった馬。そして、想像よりも強かった馬。
理想の形を体現したのは、
イスラボニータ
トゥザワールド
トーセンスターダム
近年の傾向として、有力馬が本番前にリタイアというのは大分少なくなってきたからプレイアンドリアル以外は…、という結構なメンバーが揃う流れは、特段不思議な展開でもない。
トライアル2着という残念でも上々の叩き台となった、
ワンアンドオンリー
アジアエクスプレス
ら、2頭の2歳戦統一者。
彼らは、既定路線だった皐月賞参戦に無事漕ぎ着けた。普通のようで普通ではない事。いいことではある。
何故だか、強気になれそうな気のする
ロサギガンティア
アデイインザライフ
という、関東馬2頭。想像より底力のあるところを示したトライアルの好内容。人気との兼ね合いで馬券検討のツボになる。
各馬血統に大差はないが、微妙ながら相違点がある。
ノーザンダンサーの直系は2歳王者のみ。いつの年でもあまり数は出てこないから、昨年のような強い馬だと勝ち切ることもある。
ただ、問題はこちらの方。
フジキセキ、キングカメハメハ、ハーツクライ…。
勝てそうで勝てていない壮絶クラシック路線の負け組種牡馬。有力馬の取捨に大きく影響する史実の解釈。
また、ここは藤沢ブランドの不可侵領域でもある。
02年には皐月・ダービーへ多数の手駒を送り出したのだが、結果不発に終わった。あんなに強くなった馬もいたのに、である。
もはや、皐月賞の予想だけには収まりそうもない。今年の牡馬クラシックは、切り口が無限大。悩みも増える。
これを当てて煩悩が消え去るのならば、言うことないのだが…。
血視点⑥ アジアエクスプレス
中山だけとはいえ、芝で立て続けに結果を残したことで、少なくもその万能性に疑う余地のないことを証明した2歳王者。
どうみてもまだ成長途上で、かつその進化の可能性を体型の変化によって示したことで、早熟を疑う声も封じ込んだ。
父のヘニーヒューズは、アメリカのスプリントGⅠを2勝しているが、肝心のBCでは力及ばず2戦2敗。
どちらかというと早熟。血統の印象通りの馬だった。
ダート向きに思われるのは、アメリカ血統が凝縮されているせいもあるのだろうが、タフなダート戦を特別選り好みするわけでもない。代表馬へニーハウンドなどその好例。
父はストームキャットの孫。
母はフォルティノ-カロの系統と日本向きの軽快なスピードを持ち味にするラジャババの孫という組み合わせで、こちらは芝向きの可能性を秘める。母の父ランニングスタッグは芝のGⅡ馬だった。
どれも強烈なインパクトはなく、大種牡馬からは多少距離のある血統構成。
父と母で血統構成がまるで違うように見えるが、血統表の右端の目を向けると、ノーザンダンサー・プリンスジョン・レイズアネイティヴ・ボールドルーラーなどが共通の祖先に名を連ねる。
芝をこなしていることより、この配合からチャンピオン級の馬が誕生したことの方が不思議。
内在する各大種牡馬が、その底力を少しずつ持ちより、絶妙なバランスで万能性を引き出したのだろう。
競走能力というのは、父の名前だけでは測りきれないものだ。
芝が向いているとは思わないが、世代屈指の才能で先入観を既に破壊した。
疑い続けるより、どんな可能性を秘めているのかを考えた方がよっぽど楽しい。
クラシック展望③
牝馬路線は当初から確定的だった。
フラワーCから強い馬も出てきたが、レッドリヴェールに函館で10秒近く差をつけられたわけで…。故に、皐月賞→オークスのローテを選択したのか。
無理に仕上げなければ、まだまだ伸びていきそうな素材だろう。
本流路線は平穏そのもの。
牡牝両GⅠ好走馬は、一叩きのトライアルで1番人気に推され、まあ予想された通りの競馬をして力を示した。
それに追随するグループも概ね順調な仕上がりをみせたことで、上位の限られた馬の争いという展望となった。
一応、急進勢力からは若葉S勝ちのアドマイヤゼウスに期待。父の雪辱を果たしたことと同時に、ウインフルブルームという基準馬にきっちり先着している点を最大限評価すれば、展開ひとつでの穴狙いの鉄則に敵う存在だ。
ミヤジジャスパーのアルメリア賞は強かった。阪神組2頭の動向には注視したい。
牝馬ではアスコルティの2勝目があっさりだったし、裏路線からのドカンもある。
イスラボニータ、ハープスターの序列トップは、実績を重視すれば妥当か。
ただ、抜けて強いハープスターがいる牝馬路線に対し、牡馬の場合は主力級の直接対決の数がかなり少なかったせいもあって、不確定要素は満載。
第一冠が互いの勝負レース。
蛯名v.s.その他の社台という視点から考察すれば、牝馬では当然フォーエバーモアが本命格の対抗馬だろう。
トーセンキャプテンは、トライアル好走馬が期待できそうな分、過剰人気が回避されそうで面白いか。
あと、イサベルの未勝利戦圧勝の内容は秀逸。Fコンコルドの一族で、オークス前哨戦で要注目。
両路線とも単穴という気配はしない。
最後の一花 ラインクラフト(前)
フィリーズレビューで、後に陰の候補に名乗りを上げることとなるエアメサイア・デアリングハートらを見事差し切ってみせたのは、2005年の春だった。
本戦の1番人気はシーザリオ。
桃色の帽子に可憐な勝負服。牝馬のユーイチが鞍上でも足りなかった。
敵は無敗馬。次を見越して人気に影響するのがクラシックの常識。ここが勝負。
エイシンテンダーも無傷の3連勝中。
ショウナンパンドラ・アンブロワーズという阪神JFで先着を許した、リベンジの対象者もポツポツ。
その時はピースオブワールドより楽に勝てるだろうという心の隙が、接戦を落とした要因。
楽な競馬などないのだ。
せめてもの救いは、恋人が逃げなかったこと。結果、それが勝負を分けた。
先輩騎手からサクラ伝法帳を授かり、早仕掛けを敢行して押し切りを図った。
無敗馬は揉まれた。今年同様、この年も絶好調のキャロットファームの勝負服。が、春前半は受難続き。
勝負は決した。アタマ差。
でも、ここからが凄い。
逃げるはず馬が逃げられず、1回しか逃げたことのない馬にペースを作らせた望外のスローペースを折り合って、想像以上の圧勝を見せたNHKマイルC。
またしても揉まれてしまい、それでも直線鬼神のごとき追い込みで圧倒的な才能を披露したオークス。
今のユーイチを語るのに、このシーンを編集することなどできない。
アメリカ上陸後に心の中で響きわたった君が代が、この物語のクライマックス。
2頭の二冠牝馬誕生の快挙。
ラインクラフトにとっては、必然と偶然の春。実力で制した好レース3戦。
ディープ世代の名牝物語。決して、サイドストーリーに非ず。
新馬回顧 3/22・23
今週の芝の未出走組は見せ場止まり。
いずれも穴人気にはなるものの、経験馬相手では少し厳しかったか。
日曜東西の芝未勝利で5着したメイショウルンバ、アウストルの2頭は、今後上のクラスでも好勝負できそうだ。
新馬は金曜日の中山と日曜日の阪神で、ダート1800戦が開催された。
重馬場の中山で快勝したマサノグリンベレーは、スタートこそうまく切れなかったが、乗れてる田辺騎手の巧みなエスコートもあって、1角では外に出せたから、自分のタイミングで仕掛けて最後は流すくらいの余裕を見せてのゴール。力が一枚違った。
父ゴールドヘイローは、やっぱり中距離のダート戦が合うという印象。母父アジュディケーティングのダメ押し。地味な血統だが、長いこと活躍してくれそうな素材だ。
日曜の阪神は、良回復寸前の稍重でレースが行われた。
結果は大波乱。ブービー人気のメイショウウタゲが異次元の競馬でゴール前強襲し、差し切ってのデビューウイン。かつては数多く輸入された今では貴重な豪産繁殖牝馬の子孫だが、以下⑪-⑦人気の順で決まった3連単243万馬券のレースの勝ち馬に相応しい?バックボーンといったところ。
プリサイドエンド産駒。ずっと穴馬でいてもらいたいものだ。
今年、牡牝第一冠のトライアル競走優勝の6頭のうち、実に4頭までもが未勝利勝ちの馬だった。
ハープスターとベルカントが浮いて見えるほど。
2歳時では、一番最後のラジオNIKKEI杯の勝ち馬・ワンアンドオンリーだけが未勝利組だったのとは対照的。
明けてミッキーアイルやトゥザワールドが頭角を現してきた3歳戦線は、厳しい競馬が続きそうな予感もする。