桜花賞展望
ハープスターのテイクオフを無事見届けることができた。
ハイジャック犯が現れるとも思えない。
彼女の魅力は、直線での圧倒的な加速力。父がみせた捲り脚よりも強烈かもしれない。ある意味では牝馬であり、またベガの父トニービンが持つ最大の持ち味「持続力のある末脚」が補強されたことで、徹底直線勝負型にシフトした印象だ。
決め手が最上級だから、後ろから勝負する。道理で揉まれて味が出ないわけだ。もちろん、現時点ではだが。
ブエナビスタより確信犯的な戦法。
恐らく陣営は、この一貫性を3歳シーズンのメインテーマに決めているはずだ。
京都の2000を使うよりは…。是非とも叩き台にしたい。
フォーエバーモアが、地の利があったとはいえ今年緒戦を、変則開催ながらきっちり人気に応え快勝したことで、改めてJF上位組の資質の高さを証明した。
一方で、女王レッドリヴェールは己との戦いに傾注している様子。
スティンガーとレッドリヴェールの違いを敢えて挙げれば、後者が仕方なくこうしているのに対して、前者はここで全力を出してしまうことを嫌ったため。
休ませてからの一発全力勝負というリスクは想像以上に大きい。
ステイゴールド産駒。いち早く秋を展望してもいいのでは?
トライアルを終えて思ったことは、やっぱりトライアルはトライアルだということ。
ハープスターとフォーエバーモアが、単独での競馬でも強さを見せつけているのに対し、そこを回避したベルカントに敗れたホウライアキコや人気を裏切ったマーブルカテドラルなどは、仕上がり途上も敗因だったか。
逆転の花舞台へ。キーワードは脱却。
クリスマスも逃げ解禁が吉かも。
オルフェーヴル再考
異能の三冠馬。
しかし、三冠馬という尺度を用いると少し異様さは和らぐ。
高速馬場での不本意すぎる競馬は、空前絶後の不可解な敗戦でもあった。
裏を返すと、坂も雨もあまりに気にならない男。大舞台ではことごとく雨に祟られ、2400戦が得意だったのかどうか判然としないまま引退。
芝2400Mでは、
<4・3・0・0>
良馬場は2回。本当に得意だったら、あと2勝くらい上積み出来ていただろうが。
音を上げそうな時にこそ、この馬の反逆的な闘争心に火がつく。曲者に非ず。名馬に共通する特異性だ。
だから、高速決着に向かなかった。
名馬というのは、得てして時代の潮流に逆らうアンチテーゼのようなキャンペーンを展開する。
京都の常識を打ち破ったのは三冠馬で、翌年誕生した不敗の三冠馬にセオリーの根拠を証明させてしまい、京都で負けた。
想像の世界を具現化できる馬には、真理を揺るがす力が備わっているものだ。
それにしても、あの阪神大賞典後に5勝とは、もはや奇怪ですらある。
言葉は悪いが、
「天災の寵児」
程度に思っていたのに、天才ぶりはむしろ古馬になってから発揮された。
振り返ってみても、100点の競馬というのは産経大阪杯くらいだった。
それだって、ムチを入れればもっと着差を…、といかないのも、強烈な反発力を持つが故。
此奴の100点は、他の馬で言うところの120点に相当する。
有馬記念は2勝ともどんな馬にも負けない200点くらいの走りだった。
オルフェーヴルにしか適用できない尺度。名馬の名馬たる所以を如何なく発揮した。
血統論に踏み込むと話が延々続いて、迷宮に入ってしまう。今日はこの辺で。
新馬回顧 3/15・16
今週はダート1800Mの新馬が2鞍のみで、いよいよ最終盤を迎えたメイクデビューのシーズン。
東西ともに、週中の大雨の影響が少し解消した稍重馬場で、パワー優先の競馬が展開された。
芝の未勝利戦は、土日合わせて3場で9鞍。未出走組では、日曜阪神の1800でディープ牝駒のイサベルが直線で突き抜け快勝。フサイチコンコルドの一族で、間に合えばの逸材か。
阪神では、あの世界的名血馬にしてポストショウグンの呼び声高い?ウオッカの初仔・ボラーレが初陣を迎え、2番人気でレースに出走。
580kg。パドックを歩く姿は幾らかまだ余裕残しで、むしろ今後体は増えていくタイプには見えなかった。
身体能力の高さは認めるが、あまり負担をかけずにダートからといった印象が強く、レースでは7着と期待には応えられず。
血統で言えば、人気に応え楽勝したネオジェネシスの方が個性的。
父は言わずもがネオユニヴァースなのだが、母父が今や国産血統は絶滅したボワルセルの末裔にあたるデモンズビゴーンで、母母父がアレッジドの直仔・サーハリールイスと、いけ好かない人にはとことん嫌われそうな配合を施されおり、非常に興味をそそられる。
父もあまりメジャーではない配合で二冠を制し、また母母父シャンタンでよくわからないことをしそうな気配を漂わせていたが、サンデーの個性の前では底力補給の頼れる先祖として機能。
セントサイモン系再興の狼煙なのか。
白老産まれの変わり種は、我が道を進むことだろう。
中山では、プリサイスエンド産駒のスプリングサヴァンが早め先頭から押し切った。
438kg。東西で何から何まで異なる結果となった。
春の匂い
不思議な天候の下、季節を先取りというか春の椿事が早くも波紋を呼んでいる。
関東の仕事人が、国内最高クラスの重賞競走でやりたい放題。
コパノリッキーにびっくり。デスぺラードが逃げるなんて。
最強牝馬やダート王らが屈した正攻法という罠は、波乱を起こした。
この流れには、おまけもついている。
フェイムゲーム、トウケイヘイロー、そしてリアルインパクト。(笑)
初春の3大出遅れに遭遇したファンたちは、何の因果かと余計な勘繰りを始めるのであった。神の悪戯に違いない。
春が来るとまた中山が始まる。するとやっぱりというか、2回中山の鬼・横山典弘が開眼した。
1回東京開催終了までにその年重賞を勝っていていたのは、09年以降で4回。その際、この開催で必ず重賞を勝っていて、去年と続けて今年も複数タイトルを獲得している。
まあこれだけの騎手だから、特段不思議な傾向でもないのだが、近10年でAJCC4勝という偉業の裏で、その内3年は前記の傾向に倣い、この季節に重賞を勝っている。
当人は、今いい感じくらいにしか思っていないだろうが、弥生賞を勝ち損ねたことに見ている側の方が、妙に感傷的になってしまう有様。痛快だ。
ドラマチックステージ・中山1800のメッカ。
マイネヌーヴェル、マティリアルに代表される人気馬の勝利にさえ謎の残る、異質の追憶。
根拠を示すのも困難。何せ、レースは生き物である。今年も波乱が起きそうな予感。
「デスぺラード」後の関西の競馬が平穏だから、今年の関東圏の競馬がより異様に映ってしまう。
もうあれから3年。明日への希望を各々心の中で思い巡らせていると、また春がやってきた。
最後の一花 ヤマニンシュクル(後)
エリザベス女王杯は4着。とはいえ、スイ-プトウショウと戦ってから1年1か月後の戦列復帰初戦。
その間、戦績でも後れをとったライバルは、スローペースをものともせず、いつもようにゴール前で先行馬を捉え、GⅠ3勝目をあげる。ただ、彼女にとってもこれが最後のGⅠタイトルとなった。
ヤマニンシュクルは、そんな1強の競馬でしっかり存在感を示した4着。
サクラスターオーは、菊花賞を皐月賞からの直行で制し、二冠馬となった。
マックイーンは新馬を含め、休み明けで7戦6勝。芝は5戦全勝だった。
東京とサンタアニタの休み明けで、信じられないような敗戦を喫した祖父ルドルフとて、セントライト記念のレコード勝ちや、逃げ切り楽勝の日経賞がある。
10か月以上の休み明け2戦2勝の父テイオーも然り。
長期休養明けでやたらと強いパーソロン系。
ここでも血のしがらみが、快走をアシストした。
冬のGⅢに2度挑むも、凡走を繰り返すうちに春になった。
中山牝馬S。1番人気、トップタイのハンデ56。1着。押し出された1番人気ながら、外から伸びてきた末脚は、
まさにGⅠ馬のそれであった。
しかし、GⅠでは苦戦を強いられ、得意なはずの北海道でも勝ち切れず。
最後は、2つ下の3歳女王に自由に走ることさえ許されず、脚を傷めてしまう。
鞍上に幸せをを運んできた天使は、勝利の女神にも見放されターフを去った。
辛い思いに浸る四位騎手に、しかし天使は、この日2歳のお手馬をプレゼントする。
3週後の新・阪神で爆発的な末脚を見せる、あのウオッカである。
名牝の時代は、こうして本格的な季節へと向かってゆく。