函館記念 -予想-
先週の七夕賞に引き続いて、夏の名物ハンディキャップ重賞が今週も開催される。
如何せん、このレースの荒れ方は時に常軌を逸した奇想天外な結末を迎えることもあって、歴史的事件の巣窟とも言える、日本競馬の中でも最も特異なレースである。
同一の平地重賞3連覇を成し遂げたエリモハリアーの名を冠したレースがこのレースの直前に行われるのだが、この馬の凄さは、1番人気に応えた2006年の勝ちタイム2:05.1という、国内ではまずお目にかかれないような競馬にフィットした鈍重な印象とは別のところにある。
ジェネラスの仔で、当然洋芝専門にシフトして何ら疑問はないのだが、あと2つの勝ち時計が意外と速い。
2005年が2:00.6、2007年は2:02.8。
3連覇を決めた年の場合は、恒例のステップ競走である巴賞に札幌記念以来の休み明けで挑み、勝ち馬から1.5秒差の殿11着と敗れた直後に巻き返したもの。
その上、彼の鈍重な印象に真っ向から否定するパフォーマンスをこの後披露したのだ。
この年の毎日王冠4着時の1:44.5という走破時計は、レコード勝ちしたチョウサンから0.4差。
翌年、レコード決着となった秋の天皇賞は11着ながら1:58.3という自己最高記録で走破し、また翌年の小倉記念で5着した時にはそれにわずかに及ばない1:58.4ではあったが、この時エリモハリアーは既に9歳になっていた。
エリモハリアーが、総合力でこのレースを制したという何よりの証だ。
七夕賞と同じように軽い斤量の有力馬が少ない。
3歳牝馬のバウンスシャッセに51という斤量は、可もなく不可もなしの妥当な設定。別定戦と差がない点が、むしろマイナスなほどだ。
案外、洋芝の渋った馬場は持ち堪えられない可能性は、札幌2歳S惨敗に見え隠れしている。3番手にしたが、微妙な予報も出ている。
エリモハリアーを引き合いに出したからには、
2000M 1:58.6
2400M 2:22.9
という洋芝巧者にしては、まずまずの時計を函館記念出走後の中距離重賞で記録したアンコイルドの存在を見逃すわけにはいかない。
本命の理由は、血統と戦績の両面でエリモハリアーに酷似する部分ともう一つ、その特殊性が連続好走の要因を生む古馬中距離重賞のリピーター率の高さに求めるところが大きい。
昨年、同じ競馬場の重賞で時計差7つ以上の競馬をともに好走した3頭は、いずれも中央場所の重賞を勝っている。この馬だけ格が落ちることもないわけで、京都大賞典の内容も素晴らしかった。
昨年と同じような結果だった巴賞は、勝浦騎手がテン乗りだった影響もある。結構、タフな追い方をしないといけない馬だ。2度目で一変に期待。
何だかんだで先週も馬券に絡んだ中山記念組は、流れが止まるまでは押さえたい。重になると流石に辛いが、ダークシャドウの底力は侮れない。
何でだろう? -自由・放言の奨め-
ペルーサの闘争心は、あの春の天皇賞で砕け散ってしまったのだろうか。
出遅れは敗因の一つではあるのだが、無難に出て走ったのは青葉賞くらい。これも個性。
4年間未勝利の理由は、他にありそうだ。
ダービーは超スローで、途中から動かざるを得なくなった。次のレースから騎手が替わった。
季節が変わって、騎手もまた替わった。ノリ&アンカツのブエナビスタコネクション。
職人気質のこの二人は、気難しい馬に対し、アンカツさんは毅然とした態度で臨み、ノリさんはできるだけ意志を汲み取ろうとする違いはあるが、お互い勝つために合理性を追求するタイプ。
前者は秋の天皇賞で、後者は青葉賞で能力を最大発揮させたのだが、その走りに共通するのはスピード能力の非凡さを示した点。
2000Mならいける!最後の連対は白富士S。GⅠ好走したのも秋の天皇賞の2戦だけ。父が覚醒した場所で、もう一度…。
これにより、外々追走も先頭が4度変わる異様な展開で、騎手も馬もやってられないと匙を投げてしまった春の天皇賞の敗因が、出遅れなかったことでも距離適性に問題がなかったわけでもないと、言い切れるわけだ。
「じいさんの頭の良さを見くびらないでもらいたい」
出遅れという形で抵抗を示しているのか。
縛りを開放する責務。師に罪があるとするならば、それは名手の腕に悪癖修正を託してしまったことか。
ペルーサはまだ全力で走っていない。時計不足の克服と併せ、ゲート対策の成果に拘りすぎなければ、脚元の不安再発の前に好結果が出るかもしれない。
北村騎手替わりもいい。彼は、馬にストレスをかけない乗り方ができる。