春のクラシック回顧
クラシックだけはまともであってほしいと思っていても、結局ドラマチックになっていくものだから、個性派が台頭することになる。少なくとも、牝馬路線はそのパターンに。
史上最高レベルの牝馬戦線。中心が2歳女王ではないことはままあるが、途中から候補が登場したわけでもないから、マークすべき馬は判然としていた。
レッドリヴェールは、その点では特に、特異な才能を持った馬との戦いに特別なものを見出そうとして、春の最終戦にダービーを選んだ経緯がある。
賢明であった。それが証明されなかったことは残念ではあるが。
ライバルにそう思わせたハープスターにまつわるドラマのクライマックスは、ロンシャンでの晴れがましい姿を歴史的事件として世界中に配信する形が望ましいとされてきたが、今度は日本のファンにとっても嬉しい裏切りを期待できる状況へと変化した。
だからこそ、チューリップ賞では完敗を喫したヌーヴォレコルトは、宿命のオークス戴冠であったのだと、ちょっと信じてみたい。みんなよく頑張った。
快速型も強烈な追い込み馬もいない常識的範疇の中での決戦。
でも、軸がはっきりしていたのは牡馬路線の方だ。
「イスラボニータを巡る争い」
1勝2着1回。一番強い馬であることは証明された。
面白くないと言えばそうだろう。だから、馬券の妙味に目をつぶれば、ゴールシーンの想像はしやすかった。
唯一、ワンアンドオンリーとそれを巡る関係者のダービー熱が、少しだけ神の心を動かしただけのこと。若手騎手の益々の精進を後押しする結果であったことからも、競馬界の未来は明るい。
これもクラシックならではの教示だろう。
新種牡馬考察
今年の新種牡馬は、斜め読みを助長するアウトローが揃ったという印象がある。個性派の出現は、みんなが望んでいる。
キンシャサノキセキ<父フジキセキ・ヘイロー系>
南半球産のハンデをものともせず、NHKマイルCでも3着した。だが、高松宮記念連覇の名馬にまでなるとは思わなかった。坂も回りも騎手も全て違う条件での連覇。その価値は大きい。
気難しさがあって、距離への耐性を求めなかったのもよかったか。
プレザントコロニーとリファールの血が、どう機能するかが鍵。父はその影響が大きかったから、1600もまともに走れなかった。
母ホットプレイのタマモホットポット(牝)は期待できる。
ハービンジャー<父ダンシリ・ダンチヒ系>
キングジョージ覇者来日。昔よりは、血統の質が軽くなったこともあり、異国の馬でも本質的な差は小さくなった。
が、ノーザンダンサー系3本を主成分とする、いかにも欧州血統といった配合は、その血を好むサンデー系とは相性もいいだろうし、配合しやすい側面は認めるが、如何せん血が偏りすぎている。
ノーザンダンサーの血は、日本の強い馬にも必ず入っている。ひとまず、エピファネイアの半弟・クローディオの動向を注視したい。
ヴァーミリアンとカネヒキリも産駒がデビューする。真価はダートでこそだろうし、クラシック向きは滅多に出さないとは思うが、妙に惹かれるところもある。鈍重に見せない中型馬が出るかどうかだ。
他にもワンダースピード・ワイルドワンダーらもいて、ダート戦線は楽しみ。
ブレイクランアウトは芝専門だったが、こちらもダート向きの印象。芝の重賞級が出れば、父の名も上がる。