フローラS -回顧ー
マジックタイムは休み明けだったから、あっさりがあるならイサベルの方かと思っていたのだが、双方力を出し切れなかった。春の3歳牝馬のこと。パドックで見たイサベルに、前走圧勝というオーラは感じられなかった。敗因は全てのマイナス材料であろう。
休み明け、初コース、体重減。
一族で最も成功を収めた姉ブエナビスタが、どちらかというと成長曲線が持続性のある一定しているタイプだったから、極端な体重増で成長力を示すことがない代わりに、精神的な部分の影響でもない限りは、異様に体を減らすこともないといったいい面が似ているのだろう。
サングレアルは新馬もそうだったが、こんな馬が人気になって大丈夫なのか?という、か弱さが前面に出た小さな体をしている。
もし新馬と今回で違うものがあるとすれば、マイナス材料が多かった割に姉のような他をまるで意識しない神経の図太さが身についていたように見えたところか。
走破時計が前回より速くなった分、上がりは競馬の印象と違い、時計を縮めた分だけ遅くなった。快時計に向かない性質は一族の共通課題だから仕方ない。
それはオークスまでなら大丈夫だろう。ただ、次も勝ちきれるようなインパクトを求めるのは流石に厳しい。キャリアがあまりに少なすぎる。衆目の2番手当確か。
そんなうら若き少女を駆った岩田騎手は、終始目前にマッジクタイムを見据えて、思い通りの追い出しから、最後は大外に持ち出していた。直前の出来事も影響あり。だから、快勝ともいえる。
そのマークされた側のマジックタイム。
直前のレースを勝った杉原騎手は、次はマジックタイムを心中複雑な中検量室から見るはずだったが、何の因果かかつてのお手馬が手元に戻ってきた。
レースは卒なく乗れた。が、最後に止まってしまった。距離は長く、またレコード決着も休み明けでは厳しかったということか。
騎手は敗因ではない。
サングレアルと小差だったブランネージュや、桃色帽のマイネオーラムも距離と格に目途が立った。マジックタイムだって、叩かれて次がスローでも折り合えればまだわからない。
この組は、じっくり見直したい。
フローラS 予想
この世代の牝馬の中核を形成しているのは、阪神ジュベナイルフィリーズ(JF)上位組だ。
その阪神JF組でこのレースを制した例をひとまず調べてみたのだが、阪神3歳牝馬Sと改称後、出走条件が絞られて24年も経ったというのに、まだスティンガーしか勝っていないのだ。もちろん、前身の4歳牝馬特別時代の話。
時代は流れて、今阪神競馬場の様相は大きく変容し、新コースのマイル戦からは歴史的名牝が湯水の如く、毎年のように出現している状況。そこから中一週でここに挑み、また3週間後のオークスに出て結果を出せるほど、日本の競馬は落ちぶれていない。
ちなみにだが、スティンガーの前でこれに該当すると思われるのは、桜花賞を制した後に叩き台としてここに挑んできたメジロラモーヌ。その頃2歳の牝馬が暮れに目指したのは、中山マイルで行われていたテレ東賞3歳牝馬S。当然、ラモーヌはそのレースも勝っている。
回りくどいついでに、穴党はその辺りから今回2頭いるJF組を切る捨てる要素を探していけばいいという事だが、逆に言えば、それに逆らうという意思表示でもある。
母が勝ち切れなかった舞台で、娘がたった一度しかない名誉挽回の機会を得た。
タイムウィルテルがシンコールビーにハナ差屈したのは、今から11年前の春。奇しくも、前述のメジロラモーヌ以来17年ぶりの三冠牝馬が誕生した年だ。
翌年ダービーで2着激走するハーツクライが父という、クラシックの落し物拾いを宿命づけられこの世に生を受けたのがこのマジックタイム。
彼女は期待に違わず、両親が得意とした左回りで結果を残して、除外されることなくJFへと参戦。
だが、恐ろしいまでに猛々しく、あまりに逞しいライバル相手に掲示板にはわずかに届かず。
そこで3着だったフォーエバーモアに、クイーンCでも先着を許し…。
父がダービーでカメハメハに粉砕されて不遇の時代に突入したように、母もこのレースで曰くを残した。
母の父ブライアンズタイムの傑作たる三冠馬を天皇賞で破ったのは、紛れもないシンコールビーの父サクラローレルである。
名馬の血が、因縁深く絡み合うのがクラシック路線。
結論としては、実績からここでは格上だろうという評価。
父とは因縁のあるディープインパクト産駒で、期待の一頭に数えられるイサベルを挙げようと思ったのだが、血の軌跡を辿っているうちに、つい浮気をしてしまった。一発はある。
前走阪神組は、人気あるなしに関わらず押さえは必要。距離延長は微妙かもしれないが、ブランネージュはさすがに切れない。対抗ニシノアカツキと同格評価で、フラワーC組の決め手には疑問もあり、広い馬場の好走歴を重視する。