旬な男を詠む
先日発表されたワールドベストホースランキング。ジャスタウェイのブッこ抜き独走にもミソをつけるような数字が公表された際は、論拠を持ってその審査体制を正そうと思っていたのだが、当該カテゴリー単独トップという評価に。
海外での結果。ディープが当時の基準で125ポンド。今回が130だからハーツの仔が…、なんて感情論を持ち出す暇はなかった。
一つ確かなことがあるとすれば、世界中に散りばめられたファラリスの子孫たちは、どの国においても主要血脈を形成し、国際的評価の高い競走で傑出した結果を残してきたという事。必然の流れだ。
世界一の馬券名人たる日本の競馬ファンは、何を今更と、嘲笑っている。
賛否両論の桜花賞の騎乗。今また違うプレシャーを感じつつ、2度目の皐月賞制覇を目論む川田将雅。
フクノドリームの逃げ脚は恐らく目視できなかっただろうが、最初から捕捉に手こずる相手とも思っていなかったはず。
本音を隠したインタビューではなく、勝つべくして勝ったと胸を張った受け答えは、敗戦のリスクを常にはらむ彼女の戦法を受け入れているように見え、信頼感も増した。
でも、それは策の一つを習得したに過ぎず、父が思わぬ戦法を強いられたかの地の苦闘から学ぶことはあまりに多い。
現状乗り替わりは得策とは思えないが、次戦は大切にだ。
矢作厩舎が快調に勝ち星を積み重ねている。
師は、強面の表情に違わぬ信念の男。転厩話が現実になったこともある。
明快な結果を出して得られる名声に左右されるような俗物ではない。
華麗なるキャリアから展開した未来進行形の変遷。不可能を可能にする化学変化の証明を期待したい。
血視点⑦ ハープスター
凱旋門賞制覇の可能性についてだが、少なくとも適性はあると思う。
唯一の欠点とされるのが母父ファルブラヴの存在。牝馬らしいしなやかなフォルムではなく、むしろファルブラヴの代表産駒たちの成功例から見る共通項が、ある意味でスピード競馬への対応力を強く支持するようなここまでの結果ではある。
ただ、完全欧州型の血統構成は、ノーザンダンサーの継続クロスによって強く結び付けられ、また上がりの勝負に向く差し脚自慢のディープインパクトとトニービンの存在は、このスーパーヒロインを語る上で欠かすことはできない。
祖母ベガを形作った父のトニービンと、芝適性以外の部分を補完する主要素たる母父ノーザンダンサーとの成功配合は、トニービンの母父としてなど、裏方仕事に向く性質を暗示している。
また、配合上のキーファクターとなるノーザンダンサーと父ディープインパクトとの関係では、自身に含まれるノーザンダンサーが配合相手の中にあるそれとのクロスによって、ジェンティルドンナやダービー馬2頭輩出という結果を導き出した。
継続・多重クロスは薄くても意味がある。5×(4×4)。
母の代では3×3と強烈なインブリードを施されていたが、1代経ることで適正なポジションに落ち着き、仔がディープの牝駒として生を受けると、前記全てのチャンピオン距離覇者の血は完全に覚醒した。
怪我の心配は確かにある。
だが、この馬の性質を見ていくと、その懸念は日本での多頭数における高速競馬に対し、もう別れを告げるべきシグナルのように思えてならない。
彼女のためを思うなら、そんな発想も存外筋違いと限らないだろう。