早熟か持続か
これは血の宿命なのか否か。
ストームキャットを共通の祖父に持つ2歳戦のスターホースは、年明け後ここまで共に未勝利。
奇しくも、こちらも祖父が同じタガノブルグは、NHKマイルCで同じヨハネスブルグ産駒のホウライアキコを人気馬もろとも呑み込もうというゴール前強襲で、大いに見せ場を作った。
父が同じと言っても、結局は別物なのは百も承知で、それでも違う何かを求めていくのが今回のテーマである。
アジアエクスプレスの今後については、特に括目すべきものがある。類まれなる身体能力の高さで芝・ダートの垣根を飛び超えた活躍を見せていたが、久々のダートで恐ろしいほどに反応できず大惨敗。
「やっぱり早熟か?」
という評価も、当然出てくる。ストームキャットだからか…。
母父ストームキャットながら皐月賞3着と健闘したタイキシャトル産駒のメイショウボーラーは、芝の短距離に鉾先を向けて3歳秋までは踏ん張ったが、結局最後は、ダートでGⅠタイトルを獲得。その流れを見て、この早すぎる凡走を根拠とした早熟評は存外的外れでもない。
同じヘニーヒューズの日本の代表産駒であるヘニーハウンド、ケイアイレオーネらが、古馬戦で一発劇勝後は大不振であることも論拠をごり押ししている。
昔より大分減ってきた超早熟型。消耗を防ぐレース後のケアの選択肢増加が、再生を可能にしてきたのも事実。
一つ年上でBCディスタフ圧勝のビホルダーは、年明けの古馬初戦までは難なくクリアできた。
結果が全てとは思わないが、レパードSではせめても走る気だけは見せなければならない。
2歳秋の彼が、いずれは戻ってくると信じたいのだが…。
血視点⑩ 種牡馬ハービンジャー
ハービンジャーが日本に来た理由が未だ解せないままに洋芝の競馬が始まり、思ったより早くいい結果を出したその意外性について考えてみた。
トゥザヴィクトリーの全妹であるギーニョの仔・スワーヴジョージが、函館開催の最終週の芝1800Mで快勝して、産駒初勝利を決めたのだが、翌週開催の替わった札幌の開幕週でも、ジャズファンクが新馬勝ちしたからもう無視することはできない。
後者は祖母シンコウラブリイという良血馬。
ノーザンダンサーの入った良血牝馬との配合で、きっちり結果を出せた意味。
ハービンジャーを形成する父、父母父、母父、母母父にはそれぞれノーザンダンサーが含まれ、うち3者はその直系。欧州型の濃密な同系配合の権化を日本に連れてきたのは、それがこの国の主要血統ではないからである。
高いスピード能力と距離こなす粘り強さを兼ね備えたオグリキャップが、種牡馬として成功しなかった要因として、激戦の連続による消耗と自身より速い馬を生む才能に恵まれなかったことが挙げられる。
そのネイティヴダンサー系の繁栄は、快速レイズアネティヴを送り込んだからこそのミスプロ系の大成功に繋がったわけだ。
だからハービンジャーにだって、祖父デインヒルのような大種牡馬となり得る可能性を少ない大レース経験数から推論できる。
想像の域を脱しないが、オグリキャップとの違いがいい方に出るという見立ても無理筋ではない。
無論、血統構成は違うのだが。因みに、ハービンジャーの中にはネイティヴダンサーの血が6本入っている。
芝の根幹距離であるマイルのGⅠ馬を早くから輩出すれば、未来は開ける。